ここぞという時に怪我でチャンスを逃さないために|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第106回】
前回コラムで書いたプロサッカーチーム「Toronto FC」のトライアウト中に強いコンタクトを受けて歩けなくなりクリニックに直行してきたサッカー選手は、危ぶまれた翌日のファーストチーム監督も観に来る大事な試合に気合いで出場し、結果的にはトータル6ゲームの練習試合でハットトリックを含む7ゴールを決めて見事チームとの契約を結びました。
ママもご機嫌で「My secret weapon」の面目躍如でした。3月からは毎週米国チームとの試合遠征があるので学業との両立が難しいですが、本人はやる気十分なので今シーズンが楽しみです。
また、昨年シーズンオフに「Toronto FC」を離れて目標であるヨーロッパのサッカーリーグを目指して現地でトライアウトに挑戦していた選手はというと、今までに経験したことのないレベルの強度の練習キャンプをトルコで消化し実績を残し、目標であるヨーロッパリーグのチームから複数年契約のオファーをもらうことができました。
しかし、先日の練習試合で足首を捻り、ヒビの入る怪我をして全治2ヶ月。せっかく勝ち取った複数年オファーが暗礁に。オンライン会話で、2人で色々と考えた内容を少しお話しします。
- 問題点1 複数年プロ契約が白紙に?
- 問題点2 将来絶望的?
- 問題点3 なぜこの様な問題が起きたか?
この3つが話の要点です。
プロ契約がどうなるかは今の状態では私たちに出来ることは少ないのですが、回復する予定の2ヶ月後にワンチャンスをもらえることを信じて足首以外のグレードアップを目指すことです。。せっかく手に入れたプロのオファーが手からこぼれ落ちたような状態で悔しいのは当然ですが、今やるべきは落ち込むことではなく、現実を受け止めて次に繋げようという話になりました。
まず反省しなくてはいけないのは、私たちの甘さ
この選手は昨シーズン「Toronto FC」のトレーニングにおいても夏にバテることはなく、プロとしての体の強さを身に付けたと過信していました。日本や北米では怪我を避けるためにトレーニングのボリュームをコントロールする傾向にありますが、今回トライしたチームは、最大負荷をかけて生き残る選手をピックするようなサバイバル・スタイルでした。
つまり、こちらにとやかく言う権利はなく、やるしかなかったのです。良く言えば、選手のエージェントの人からプロサッカー選手でも練習についていくのが難しいというキャンプは乗り切ったので、むしろプラス評価でもあります。怪我を防げなかったマイナス点もありますが、プロとしての強度が未だ不足しているのをこの若い時期に実感出来たのは、今後の対応次第では十分プラス要因に変換できます。
一番考えるべきは、結果的に怪我を防げなかったこと
ここは大きく反省すべきである。なぜかいうと昨年夏から改善に取り組んでいた問題とリンクしている可能性があるからです。昨年取り組んでいたのは足底の接地面のバランス改善です。つまり立っている時、走っている時に足底の外側に加重する癖があるので、足首、膝、ヒップジョイントの調整により可能な限り足底ポジションをフラットにして軸足の安定感を生み出してパスのコントロール、ボールを強く蹴ることを目標にしていたのです。
本人の自覚やスプリントのトップスピードが早くなったので、満足していた部分があります。これが直接の原因かは今となっては不明ですが、防げた可能性のある問題を未然に防げなかったのはサポートさせてもらっていた自分の責任でもあります。
今回の例に限らず、幼少期から取り組んできたスポーツやダンスなどで、ここぞという時に怪我でチャンスを逃すというのは非常によくある話です。大切な試合に向けてハードな練習を積み、練習で忙しいので練習後の体のケアまで目が行き届かないことがあります。
大きな怪我につながる慢性的な疲労は、急性疲労の筋肉痛の様に痛みを伴わず爆発するまでサイレントなケースが多く、問題が見逃される要因です。体のコンディショニングまで目の行き届かない指導者に付いている場合、周りにいるファミリーなどが定期的にコンディショニングを取り入れるなどの対策が必要です。
恒例のりくりゅうペアの話題
大雪で全日本選手権を棄権しなくてはいけなかったり、その後もオークビルからトロントにコンディショニングに来る日に限って大雪となり日程調整が難しかったりします。過去数年同じペースでトロントに来てもらっているので1日でも来る日がズレると、りくりゅうペアの練習に差し支えるようなレベルに達しています。
本人たちからも、「この日程がギリギリです。1日伸びてもできないことが出てくる!」と言われています。本人たちは数週間後に控えた世界選手権に向けて気合い十分ですが、私の役目は、りくりゅうペアが気合い十分で空回りしないように目を配ることです。
TORJA4月号が発行される頃には今シーズンの最終章である世界選手権で良い結果が出ていることを願っています。皆さんの温かい応援を宜しくお願いします。