慢性肩こりを解消するアイディア|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第118回】
患者さんからの訴えが多い肩こりの問題。慢性化して、肩が凝っているのが普通という人も多いです。病気では無いので、つい我慢しがちですが、出来れば改善したい症状です。今回は肩こり解消のツボをご紹介するのではなく、肩こりを引き起こす原因や、その対策についてお話しします。
肩こり症状が起こるメカニズムを考えてみましょう
違和感を訴える人が多い肩甲骨内縁から首筋にかけてのコリの正体は、肩を上に引き上げる筋肉のグループです。一つの筋肉ではなく、いくつかの筋肉が何層かになって存在しています。これらの筋肉の緊張から来る違和感が俗に肩こりと言われる症状です。
肩の動きと共にスムーズに伸び縮みして動いていれば、筋肉が緊張してしまう事は少ないのですが、同じ動きを繰り返していたり、同じ姿勢を長時間続ける事などにより筋肉が縮んだままになってしまうと、血流も阻害されて、その部分の体温が低下したりして筋肉の緊張状態が起こります。
この状態を長く繰り返していると、少しストレッチしたくらいではコントロール出来なくなってしまい肩こり改善を諦めてしまう人が多いです。このような状態を放置しておくと、筋肉の緊張だけでなく、姿勢まで悪くなってしまうのも改善を妨げる大きな要因です。
ここまで肩こりが酷くなったら回復するのが難しいか?というと、そんな事はありません。肩こり改善にチャレンジしても、途中で挫折してしまう人が多いのには、アプローチの方法がじゅうぶんでないことが多いです。
ここでまず理解しなくてはいけないのは、この段階では、長い間筋肉が緊張していた事により関連する関節まで緊張が強くなり可動域が狭くなる事により筋肉の収縮を妨げるなど、すでに2次的な問題が発生している可能性が高いということです。
このように2次的な問題が発生してしまった後に、肩を揉むとかストレッチするなど部分的なアプローチをしても効果を上げることは難しいのです。
アドバンスレベルの肩こり改善アプローチ
①正確性
ただ肩を揉むのではなく、どの筋肉のどの部分をどの様な刺激で揉むか?というような事を理解していくと、改善策が効果的に進んでいきます。例えば肩こりに伴い緊張が強まっている可能性の高い肩甲骨周りを揉む場合です。
背面から触りやすい三角形をした肩甲骨の位置を確認したら、肩甲骨の内側、外側、上側の3方向の辺りの筋肉をそれぞれ丁寧に揉みます。肩甲骨は肩の動きに連動して自由自在に動く骨なので各方向に違った筋肉がくっついています。それを全部揉んであげないと肩甲骨を緩めた事にはなりません。
実は肩甲骨の裏側にも筋肉がくっついていて肩甲骨の動きを妨げる大きな原因、しいては慢性肩こりの原因となる事が多いです。この部分を緩めるのは、少々難しいのですが、イメージ的には脇の下から肩甲骨と肋骨の間に手を入れて緩める感じです。
さらに肩甲骨の一部は肩の前面。鎖骨と上腕骨のつなぎ目の近くにボール状の骨として確認できます。このボール状の骨の周りの緊張を緩めてあげると肩の関節が緩むので慢性肩こりの改善に大きく役立ちます。
②刺激の仕方
酷い肩こりの場合、出来るだけ強く揉んでコリを解消する衝動に駆られますが、あまり良い考えではありません。筋肉の構造は、筋肉繊維、筋膜、腱などで構成されていてそれぞれ作りが違う組織です。つまり、各々に適した刺激をしてあげるのが効果的だという事です。
順番をつけると、腱、筋膜、筋肉繊維の順番で刺激するのが効果的
腱の刺激
筋肉と骨の接続部で慢性疲労が蓄積される腱の位置を確認して押さえて、2分程度持続して圧をかける。
筋肉の両端の緊張がリリースされる。腱は関節の周囲に存在しているので、腱の緊張をとると、関節の緊張も和らぐ可能性が高い。この緊張を和らげるのが慢性肩こりの解消のポイントとも言える。
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筋膜の刺激
筋肉の表面のパンパンになってしまった筋膜を緩めるには、皮膚と一緒に筋膜を捕まえてゆっくりと引っ張るイメージ。筋肉の表面の膜が緩むので筋肉繊維へのアプローチが効果的になる。
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筋肉繊維の刺激
腱と筋膜を緩めた後にコリのある筋肉を揉んで血行を良くして絡まった筋肉繊維をほぐして緊張を緩める。
このようなステップを踏んで正確に各ポイントを刺激すれば、ただ強い力でコリの部分を揉むよりも良い結果が得られる可能性が高いです。あまり強い刺激は体が防御体制になるので、より緊張を生じてしまうリスクがあることも理解しておくべきでしょう。