Glass Half Full #3 ロールモデル
「ミルクかレモンどちらにしますか?」カナダに来て初めてのレストランでの仕事。初めて取ったオーダーは“アイスティー”。私達にとってこのありきたりな質問は、レモンアイスティーしか取り揃えていないカナディアンにとっては異様な質問だったようで、私の輝かしいカナダレストランデビューは大笑いされて始まりました。
雇われた当時は、お客さんとしてまともに自分でオーダーも出来ないくらいの英語力だったのでとても苦労しました。読み方すら想像つかない様な単語ばかりで埋め尽くされたメニュー。まるで曲のタイトルかのようなお酒の名前達。そもそもどうやって英語でオーダー取るのかが分からなく、でも質問したくても英語でどうやって質問していいのか分からないという途方のない始末。「食器洗いとして働けば?」と仕事仲間から馬鹿にされるは、「自分の国に帰れ」とお客さんから罵声を受ける日々。そんな惨めで、ズタズタに傷つき、悔し涙を流す毎日。でも頼れるのは自分だけ。ここで自分から逃げたら、決して勝つことのないレースを始めてしまうだけ。たくさん失敗し、怒られ、笑われ、恥をかき続け、仕事中こぼれそうな涙を何百回も堪え、死にもの狂いの思いで習得した英語力、そしてコミュニケーション能力。それが認められ、一人前のサーバーとして自分のテーブルを持てるようになるまで、私は6か月かかりました。普通は2週間で終わるはずのトレーニング。当時マネージャーで私を雇ってくれたNicoleは、周りが反対する中、私の可能性を最後まで信じ、時間が許される時は英語の練習まで付き合ってくれたこともあり、辛抱強く、私の事をクビにせず待ってくれました。
そんなNicoleに出会っていなかったら、きっと私はカナダに残らず泣きべそかいて日本に帰国していたことでしょう。そして今の私のお店も存在していなかったと言っても過言ではない程、私にとって彼女の存在はとても大きいです。
そしてあの地獄の半年から5年が経とうとしています。今は彼女の様に人を雇いマネージメントをする立場まで成長しました。私のお店のスタッフはほとんどが海外から来た留学生達です。中には先月カナダに来たばかりの全く英語が喋れない男の子もいます。でもNicoleの様に理解しようという姿勢を構えれば、英語が不自由でも、ちゃんとコミュニケーションはとれるものです。そんな彼を見ていると昔の私を思い出します。私は彼にとってNicoleの様な存在になれているのでしょうか。そうであればいいなと願いながら、新しい今日を迎え、また夢に向かって前進する日々が続きます。
Nana Akimoto
– Teashop 168 Annex店 オーナー兼店長・モデル
1987年横浜生まれ。2007年にカナダへ留学。Georgian College卒業後、某スポーツバーや日本食レストラン等でマネージャーを勤める一方、モデルとしてカナダの新聞や雑誌をはじめ、シンガポールとベネズエラの大手出版社との撮影もこなす等、国際的に活躍もしている。2013年初夏にはバブルティーフランチャイズチェーンで知られるTeashop168 のAnnex店を展開し、今現在オーナー兼店長を勤めている。将来自分のレストランを開けることが夢である。














