イタリア:ローマ(3)|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第102回
ローマ:観光

イタリア語学校に入っているからと言って四六時中勉強をしているわけではない。観光をする時間はたっぷりある。今回は一般ツアーに入っていないお城と浴場を探ってみることにした。まだまだ見切れない名所旧跡がローマにはある。
余談だが、日本で京都に数年前セカンドハウスを構えた旧友がいる。しかし最近外国人だらけで京都に居たくないと言い出した。考えてみれば、イタリア観光には必ずローマが入っている。それと同じで日本に行く人は歴史の深い京都を目指す。つまり京都もローマ級なのだと思えば外国人が多く訪れるのも理解できるのではなかろうか。観光客が来なければ京都もローマも市の財政困難に陥るはずだ。
ローマ:カステル・サンタンジェロ(Castel Sant’Angelo)

これほど用途が変遷した城は珍しい。もともとは絶大な権力を持ったハドリアヌス皇帝とその家族の埋葬場として139年に建設され、217年のカラカラ皇帝まで歴代の皇帝の霊廟として使われていた。それが軍事施設、牢獄、教皇の避難場所、要塞、博物館と用途が変わり「城」と言われるようになった。

そんなわけでお城っぽくない建築で建物の奥へは螺旋式のスロープを歩いて行く。数ヶ所にある大理石の階段も傾斜は緩やか。城のてっぺんから城の名の由来でもある銅像、天使(Angelo)が下界を見おろす。テラスからはテべレ川(Tevere)とローマのワイドな眺めが堪能できるという超お勧めの場所だ。ここからヴァチカン市国のサン・ピエトロ広場へは城壁に沿って歩いていける。
ローマ:サン・ピエトロ寺院・広場(San Pietro)とコンクラーヴェ

サンタンジェロ城から夕暮れにサン・ピエトロ広場まで足を伸ばした。カトリック信者ではないがここに来るたびに一種の感動を覚えるのはなぜか。
ベルニーニやミケランジェロ、フォンタナ等の手による芸術が結集しているからか、ヴァチカンは世界で一番小さな国でありながらおよそ14億人の信者の信仰の総本山ともいうべき存在だからか、その頂点に立つ法皇の言動が世界に与える影響も一国の首相以上だからか…。
去る4月21日に88歳で崩御されたアルゼンチン生まれの第266代ローマ法皇、フランシスコ教皇は高齢で就任し12年間のお勤めを果たした。日本やカナダなど海外も広く訪問し、保守派かつ改革派として知られるユニークな教皇だった。
教皇選挙、コンクラーヴェ(Conclave英語はコンクレーヴ)という題の映画を見たが、選挙という行動の裏には複雑な人間模様が存在する。世界中から集まった80歳未満の選挙権を持つ枢機卿たち(Cardinals)の会話に普通の人間と変わらない嫉妬や落胆を映像を通して感じた。
初めてアメリカ生まれのレオ14世が新教皇として誕生したが彼はペルー国籍も持ち5ヶ国語を話すという。前教皇ほど改革派ではなさそうだが、69歳という若さだからこれから数十年は法皇として君臨することになる。ニュースではやたら彼がアメリカ人であることを強調しているようだが今後の彼の言動が注目される。
ローマ:カラカラ浴場(Terme di Caracalla)

サンタンジェロ城と同じくツアーでは素通りされがちなカラカラ浴場。第22代皇帝カラカラが4年かけて作った浴場は無数の浴室、冷却室、ジムなどから構成されていて、風呂付き娯楽施設として利用されていた。

地下から石炭を燃焼させて建物を温める古代セントラル・ヒーティングシステムが使われていた。あちこちに残された細かく美しいデザインのモザイクや床細工にはハッとさせられる。
しかしこの皇帝は浴場での淫乱放蕩にふけり膨大な資金を軍備につぎ込み、その果てに民衆を大虐殺するなど、最も忌み嫌われた皇帝だった、とは皮肉な話だ。217年に暗殺されてしまう。

現在、遺跡の前には水がはってあり、夏はイベントの舞台としても利用されている。緑に囲まれたその敷地にはゆったりと大人時間を楽しむ人たちの姿があった。皇帝カラカラの悪評とは裏腹に今は大都会ローマのオアシスとして人々に安らぎを与えているようだ。

石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、『久遠に逢う』東京・熊本、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”。PPOC認定会員、日本写真協会会員、AFP、ESL教師。www.makikoishiharaphotography.com
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