イタリア:エルバ島(1)|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第103回
エルバ島(Isola d’Elba)へ行こう!

二週間ローマでイタリア語学校に通い、ちょっぴり自信をつけた私はエルバ島旅行を計画した。ベニスの北に住む日本人オペラ歌手の友達に声をかけたら即この計画に賛同の返事。港に近いピオンビーノ(Piombino)駅で落ち合うことにした。
さて旅行中、大きなスーツケースをどうするか。学生アパートでは預かってくれない。駅の周りにはデジタル化した無人のロッカー、スーツケースがゴロゴロ床に所狭しと並べてある有人の預かり専門業者、そして、ホテルの一時預かりサービスの選択肢がある。
私が選んだのは歩き慣れた駅前道路にあるホテル。安価、安心、利便性で決めた。エルバ島から戻ったらここに一泊し翌朝ローマ駅(テルミニ)始発のローマ空港(フィウミチーノ)行き電車に乗ればいい。
エルバ島南海岸―マリーナ・ディ・カンポ(Marina di Campo)

乗り換え時間も入れてピオンビーノまでは日立製イタリアの国鉄トレニタリア(Trenitalia)の鈍行列車で約3時間半、約20ユーロかけて地中海に沿って北上する。友人とも合流成功。フェリーの待合室はシーズンオフのためか客の数は少ない。カフェ・アメリカーノとエスプレッソを注文して出港時間まで待つ。
真っ青な空と紺青の水がピオンビーノ港に停泊する何艘ものフェリーを浮き彫りにし地中海のロマンへと誘う。26.7㎞を約1時間航海し、エルバ島の商業中心都市ポルトフェライオ(Portoferraio)に到着。そこからバスで南海岸のマリーナ・ディ・カンポに着いた頃には陽は姿を消していた。

夏場は人気の海水浴場の街としてポピュラーな場所も観光客が帰った後は静かな村の素顔を見せていた。島で評判と言われるレストランを探しムール貝スープと生ハムピザにありつく。身も心も潤い、静かな夜を歩いてホテルへ。
マリーナ・ディ・カンポの日常

小さなスーパーで果物やパンを買って部屋で朝食をとる。シーズンオフなのでホテルのレストランは休業中。村を一通り散歩した後、海に出た。夏は海水浴だけでなく、スキューバダイビング、漁業観光なども楽しめるようだ。

コーヒーが飲みたくなって村外れのカフェに入ると日曜のせいか島の男たちがカードゲームに夢中になっている。テレビはローマ法王のミサを放映していたが観ている人はいない。店内の片隅にはシーズン後に補充されたらしい観光パンフレットがぎっしりとディスプレイケースに詰め込んである。このカフェも観光客に人気の場所に違いない。
ローマ通り(via Roma)にある教会に入ってみた。日曜のミサの後で信者たちはすでに家に帰ったのかひっそりとしている。絶好のチャンスだ。友の美しいソロが無人の教会に響き渡る。私も遠慮がちに発声練習。さて、バスでここからポルトフェライオに戻るのだが、日曜とシーズンオフのダブルパンチで停留所の時刻表が正しいのかどうか不明。正しいとしても日本のように時間通りに来るとも思えない。ただ待つのみ。
ナポレオンとヴィラ・サン・マルティーノ(Villa San Martino)

ナポレオンゆかりの建物がエルバ島に2つある。その一つが彼の避暑地、ヴィラ・サン・マルティーノだ。マリーナ・ディ・カンポからポルトフェライオに戻る途中の山の中にあり、「そこから歩いてすぐだ」と言われた場所で降りて歩き始めて後悔した。徒歩1時間の坂道は路線バスがあるはずなのに一台も会わなかった。小さなスーツケースをガラガラ引きながらは厳しい。レンタカーを使わなかったことが悔やまれる。
やっと目前に見えてきたのは皇帝にふさわしい荘厳な大理石の建物、外にはナポレオンの頭文字のNがいくつも見える。彼は長期に住んでいたわけではないがエルバ島に流されてからここで地中海を眺めながらフランスへの返り咲き秘策を練っていたに違いない。

迎賓館のような作りは小さな島にしては床や柱が威風堂々としており、各国の上流階級が集ったように思われる。それと対照的に皇帝に似合わず簡素な部屋はアンティーク家具と彼の肖像画だけの殺風景そのもの。
ポルトフェライオ行きの最後のバスが出ると聞き、逃すまいと駐車場めがけて走りに走る。この日最後の客二人だけを乗せ、バスが動きだす。

石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、『久遠に逢う』東京・熊本、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”。PPOC認定会員、日本写真協会会員、AFP、ESL教師。www.makikoishiharaphotography.com
https://makiko-ishihara.pixels.com
https://nagatsuramovie.com














