イタリア:シチリア島2|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第98回

カターニャまたはカターニア(Catania)

ここは遺跡というよりバロック建築の景観が世界遺産になっている街。シチリア州の首都パルレモに次ぐ2番目に大きい都市だ。シチリアの工業、商業の中心地でカターニャのフォンタナロッサ空港は南イタリアの中で最大級。過去の地震やエトナ山(1月号記)の噴火による自然災害の破壊を繰り返しつつも目覚ましい復興をとげ、今や陸海空ともにイタリアの経済発展に戦略的な位置付けを担っている。
文化的にもルネッサンス期に花を咲かせ、1434年にシチリアで初めて大学が出来たのもここカターニャだ。作曲家、ベリーニの生地でもある。この街中の古い教会で祭壇裏の見えない場所から流れるパイプオルガンの深い音色につつまれて私たちの合唱団Coro San Marcoも歌をご披露した。
シラキューザまたはシラクーザ(Siracusa)

紀元前8世紀頃ギリシャ人によって開拓され栄えた街で都市国家にまで成長したと言われる。中でもパルコ・アルケロジコ・デラ・ネアポリス(Parco Archeologico della Neapolis ネアポリス遺跡公園)内には紀元前5世紀に出来た円形のギリシャ劇場があり、ビルの4階ほどの高さに聳える洞窟では、観光客のソプラノ歌手が「アヴェマリア」を歌い出すと周囲の人たちが最高の音響効果に聞き惚れていた。

5世紀になると人口も増しギリシャ・アテネのそれに匹敵したそうだ。7世紀後半には東ローマ帝国の支配下になり、新約聖書の『使徒行伝(Acts of the Apostles)』の最後の章に使徒パウロらがキリストの教えをローマ人たちに広めるためにシラクーザを通ったことが記されるまでになる。

現在の人口は12万人に満たないが路地に並ぶレストランやギフトショップ、青空マーケットは日本人も含めて多くの国外観光客で賑わう。シーフードといえばタコが出てくる。
ピアッツァ・アルメリーナ(Piazza Armerina)

シラクーザから西海岸行きの高速バスに乗った我々は途中のエンナ地区(Enna)のピアッツァ・アルメリーナに立ち寄った。

もともとは島で力を増していたイスラム教徒から身を守るためにできたと言われる自治都市。300年ごろに建設され、現在世界遺産にもなっているヴィラ・ロマナ・デル・カサーレ(Villa Romana Del Casale ローマ人の自治集落)には古代ローマの生活を描いたモザイクの数々が残っている。中でも「ビキニ・ガールズ」が有名。若い男女が結ばれるための部屋や集会場、アフリカで狩猟した動物をローマに送る様子、勇者の像、鹿、猪、虎など精巧で緻密なモザイクが残っている。なぜか壁でなく床にそれが施されている。色褪せを感じさせないモザイク文化はイタリアが誇る遺産の一つだ。
アルカモ(Alcamo)
長時間のバス旅行でシチリアの北西、アルカモに到着。ここの港は「アラーの神の港(Harbour of Allah)」と呼ばれていたというから大昔はイスラム教徒たちが住んでいたに違いない。16世紀には街を海賊から守るため港は意図的に破壊され、以後衰退していったと言われる。主産業は農業。
友達と散歩しながらサボテンの実を取った。注意したつもりが目に見えない毛がいっぱい手に刺さって大変なことに。なんとか皮を剥がして赤い中身を二人で食べてみた。甘酢っぱい味だった。カナダでもスーパーで見たことがあるが食べた経験はない。夜は歴史ある教会の美しいタイル張りの床に立ち地元の人たちの前で合唱をした。数日後に本土で合唱祭が始まる。
エリーチェ(Erice)

シチリアの中で一番思い出に残るのがこの可愛い街、エリーチェだ。アルカモに近く、人口約2万7千人の町は小さな地図には載っていない、観光穴場。ギリシャ文化を受け継ぎながらも12世紀初めにノルマン民族が占領までアフリカ・アラブ系民族が住んでいた。快晴の日には遥か地中海西にアフリカが見えるとか。
エリーチェのカテドラル(Real Duomo)には壁画ではなく大理石の色を利用した装飾が目立つ。祭壇から天井へ、そして天井一面のクリーム色のバターミルク石の彫刻は繊細で気の遠くなるような人間の作業が想像できる。これまで見た教会とは対照的。その幻想的なクリーム色にずっと包まれていたかった。町の門を出る前に、アイスクリームを買ってエリーチェに別れを告げる。

石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、『久遠に逢う』東京・熊本、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”。PPOC認定会員、日本写真協会会員、AFP、ESL教師。www.makikoishiharaphotography.com
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