北海道3:旭川 ―大雪山国立公園|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第94回
旭山動物園

稚内から飛行機で千歳空港に降りた私たちは特急ライラック23号で旭川へ向かった。約1時間半の電車の旅だ。
旭川市の有名な旭山動物園は実は動物の感染病や寝てばかりいる動物で客離れしたことが原因で1984年以降廃園の危機に直面していた。それを入場者数では東京の上野動物園と肩を並べるほどの年間150万人(2023)を誇る動物園になったのはユニークな対策が成功したからだという。
「冬の動物園」、「夜の動物園」、「行動展示」、「手書き看板」という斬新なアイデアを導入。シロクマとガラス越しにご対面できたり、ペンギンが泳ぐ水中トンネルを歩いたり、飼育係の餌付けを間近に見たり。冬はペンギンたちが雪の園内を観客に混じって散歩するのだとか。
去年私が南極でペンギンを見た時「Don’t touch, don’t chase」と言われたのを思い出した。雪の園内を散歩するペンギンを子供たちが追いかけないだろうか、とちょっと気になる。見学に最低2時間は必要。
大雪山国立公園―層雲峡

動物園を後に大雪山国立公園へ向かう。鉄道はない。大雪山という名の山があるわけではなく2000m級の山々の総称だ。道内で一番広いこの国立公園は北海道のド真ん中にあり「北海道の屋根」とも呼ばれる。最高峰は旭岳(2291m)。層雲峡は国立公園に入ってすぐのところにある。陽がまだあるうちに黒岳(1984m)ロープウェーからリフトに乗り継いで7合目へ。そこから「黒岳カムイの森の道」という短いハイキングコースを歩く。歩き足りなかったが熊に遭遇しそうなので適当に切り上げることにした。足元には残雪もちらほら。層雲峡温泉のホテルにチェックインするとロビーでアイヌの人たちによる歓迎の歌が始まっていた。観光客も一緒に輪になって手拍子を叩いている。その夜、バイキングを楽しんだ後、温泉を堪能。朝、部屋の窓から入る緑の風のなんと爽やかなことか。

層雲峡はその独特の地形で有名だ。代表的なのが「大函(おおばこ)」。川の両岸が柱状節理の断崖絶壁になって箱の形になっていることを言うのだそうだ。3万年まえの噴火で流れてきた溶岩が冷えてできた規則的な割れ目になっている。層雲峡を過ぎ、やまなみハイウェーで三国峠へ出る。言われていたほど運転するのに大変な場所ではなかった。あっという間に通り過ぎてしまいそうな看板の前で記念写真をとる。
糠平(ぬかびら)温泉―タウシュべツ川橋梁(きょうりょう)

大雪山国立公園のハイライトは糠平湖にあるタウシュべツ川橋梁だ。北海道遺産「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁」の一つで他にもアーチ型の橋が近隣にあるが四季を通して天と地をバックに美しい全貌を見せるのはこの橋だけ。昭和12年に建設され、昭和55年のダム工事とともにその役割を終えた。全長130mの廃業した橋はボロボロの状態だが敢えて取り壊わされることもなく、美しい自然に静かに溶け込みながらその生涯を全うしようとしている。まるで人の一生のように。その優雅な姿に魅せられ多くの写真家がタウシュべツ川橋梁を撮影しに北海道に訪れる。

旧鉄道の遺産巡りをするにはNPO東大雪自然ガイドセンターのツアーに入るのが一番いい。乾燥期ならこの橋の下を歩くこともできる。秋には水嵩が増して水没することもあり「幻の橋」としても知られる。四季を通して見守るガイドセンターのウェブサイトにはスタッフが撮影した素敵な橋の風景写真がたくさん載っていてまた行きたくなる。
閑散とした糠平温泉のホテルはかなり昭和チック。暗い急な階段をおりた谷川の露天風呂で疲れた足を揉みほぐす。
ひがし大雪自然館

環境省が管理する敷地面積970mのゴージャスな自然体験館は無料で入れる。前述の東大雪自然ガイドセンターとは別の建物。
目を見張るのはその展示物の量だ。昆虫標本は5000点もあり、蝶の標本は素晴らしい。ヒグマ、エゾシカ、オオワシ、シマフクロウ、エゾオオカミなどの剥製、大雪山国立公園の地形や動画、登山情報、グラフィックな解説パネル。
体験コーナーではクイズやパズルで昆虫の体の仕組みが学習できる。子供連れや登山者にはマストの場所だ。なお施設内の照明や動力には太陽光発電システムを使っているのだとか。

石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、『久遠に逢う』東京・熊本、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”。PPOC認定会員、日本写真協会会員、AFP、ESL教師。www.makikoishiharaphotography.com
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