伝統の道を拓く⑤|金継ぎ開拓民のお茶休憩
世界における金継ぎの現状を共有し、皆さんの意見を伺ってみようと発足した「全日本金継ぎ会議」。これまで横の繋がりがほとんどなかった金継ぎの業界において、初の試みとなった本会議には、多くの漆芸や漆産業に携わる方々がご参加くださいました。
海外における文化の盗用という問題は、日本国内ではあまり情報が入ってこず、特段差し迫った課題と感じることは少ないかもしれません。それでも今回、この現状を共有したことで、参加者の方々に危機感を持っていただけたことに大きな意義があったように思います。
また、漆ではない素材を用いた技法を「金継ぎ」とは異なる名称で呼び分ける必要性や、それらが食品安全性(フードセーフ)に反している可能性についてなど、日頃から多くの方が抱いていた疑問や違和感についても活発な意見交換が行われました。
最終的には、「金継ぎについて知りたい人々」や「公的な情報を求める国内外の機関」に対して、その定義やその周辺領域の情報を整理して示せる団体が必要であるということを皆で確認して、その会議は終了しました(議事録をご希望の業界関係者の方は、お問い合わせ下さい)。
この会議を通じて、「何かしら行動を起こす必要がある」と考えている方たちと繋がれたことは、私にとって大きな指針となりました。
とはいえ、漆や漆芸業界の方々はとても真摯で控えめな方が多く、自ら旗振り役を担おうとする方はそう多くはありません。特に、500年もの歴史がある技法において、その定義や名称を定めるには、様々な方面との調整能力だけでなく、必ず起きる批判に晒される耐性も必要となってきます。
私の方で小さな裏方でも始められれば良かったのですが、カナダ在住であること、何者でもないこと、そして異国でのコロナ禍という生活の不安定さもあり、本格的に動き出すことはできませんでした。
そこで、自分が今できることを、できる範囲でしっかり積み重ね、時間をかけて「何者か」になるしかないと考えました。
それは、カナダにおいて、金継ぎと日本文化について日本人と同じ目線で語り、実践し、文化保存に協力してくれる人をできるだけ増やすこと。
そして、公の実績と立場と多くの賛同者を得られるよう、「金継ぎ界のピエロ」になることでした。







