特別寄稿 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第24回
本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授
久慈 浩介
昨日盛大なにぎわいをみせた日本酒フェスティバル、Kampai Toronto vol3。
このイベントに参加した岩手県、南部美人の蔵は3.11東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。
2013年4月5日、日本のゴールデンウィークを前にして、新年度が各企業や学校で始まったこの日に、とてもうれしいニュースがありました。それは、東日本大震災津波で壊滅的な被害を受けた、三陸海岸の日常の足で、沿岸の皆さんの悲願で開通した「三陸鉄道」が全線開通しました。震災から3年と少しの時間を経過し、南リアス線が5日、岩手県大船渡市の吉浜―釜石市の「釜石間(15キロ)」で運行を再開し、盛―釜石間(36.6キロ)の南リアス線が全線復活しました。続いて、次の日の6日は北リアス線田野畑―小本(岩泉町)間(10.5キロ)が再開し、107.6キロの南北リアス線全線が全面復旧しました。
三陸鉄道は、岩手県の沿岸住民にとっては無くてはならない日常の足で、マイレールとして親しまれてきました。多くの学生たちが通学で使い、おじいちゃんおばあちゃんなど、車を持っていない高齢者は通院の足として使い、本当に貴重な鉄道でした。
しかし、東日本大震災津波では317か所が線路の流失などで被災、しかし、道路も何もかにも津波で壊されてしまった沿岸部の日常の足の確保をめざし、震災からわずか5日後の3月16日には北リアス線の陸中野田駅と久慈間で運行を再開して注目を集めました。
今回はクウェートの支援により、新型車両を3台導入し、記念式典にはクウェートのオタイビ駐日大使や藤原紀香さんなども出席して、盛大に挙行され、沿岸部のたくさんの住民の皆さんも駆けつけ、盛大に1番列車の出発をお祝いしました。
復旧には大変な苦労がありましたが、三陸鉄道の望月社長は、インタビューで、一番懸念された費用の件で、早期に復旧計画をたてたことから、資材の高騰などの影響が少なくすみ、108億円の予算から、91億円まで復旧費用を圧縮できたことがありがたかったとコメントしています。これは予定価格よりも安く入札したゼネコンの復興に対する「心意気」もあったようで、まさに日本全国の支援によって復旧を果たすことができました。
さらには、NHK朝の連続テレビ小説で記録的な視聴率と社会現象をおこした「あまちゃん」の効果も高く、「あまちゃん」の影響で、三陸鉄道の知名度が全国的となり、なり、全国から「早く乗りたい」「早く復旧してほしい」という、たくさんの思いが寄せられたとも言われております。
望月社長は、将来的にも人口が減り、高齢化が進む中、鉄道の存在意義は大きくなる。乗客が増えるとは限らないが、駅を中心とした沿岸市町村の復興まちづくりと連動しながら、地域の生活の足として役割を果たしたい、と言われています。
「あまちゃん」をご覧の方はご存じだと思いますが、三陸鉄道は本当に日本の古き懐かしい情緒ある鉄道です。おもてなしの心もたくさんあり、住んでいる住民との触れ合いも魅力の1つです。ぜひカナダにお住いの皆さん、帰国の際には三陸鉄道に乗って、「あまちゃん」の世界を体感しに岩手までおいでください。
皆さんの三陸鉄道の利用が増えれば増えるほど、復興は加速していきます。どうぞよろしくお願いします。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp