特別寄稿 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第12回
昨日盛大なにぎわいをみせた日本酒フェスティバル、Kampai Toronto vol2。
このイベントに参加した岩手県、南部美人の蔵は3.11東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。
「どうせ食べるなら、東北の食材を使った料理を食べてください。どうせ飲むなら東北のお酒を1杯だけ飲んでください。このようなことも東北の復興支援になります」
このTwitterが発信された、2011年3月下旬、このツイートはとんでもなくリツイートされ、拡散されていきます。
「そのとおりだ、自粛ではなく東北の酒を飲もう」「自粛しちゃったら経済がおかしくなるのでは」「自粛するくらいなら東北の食べ物を食べるぞ」
様々な賛同の意見をつけて、どんどんリツイートされ、様々な業界に波及していきます。
飲食業界は「ぜひ飲みに来てください」と反応、農家の方々は「うちの米で酒を造ってもらっている。酒蔵が無くなったら大変だ」と反応、さらには芸能界や経済評論家の方々にも波及していき、有名な漫画家の先生や、有名な経済評論家でテレビ出演多数の方もリツイートしてくれます。「東北の酒蔵からお願いが来ました。私は賛同します」と。
これが、目には見えにくいのですが、ネット上ではものすごい勢いで拡散していき、東北の物産を食べたり飲んだりしよう、という雰囲気が出来上がってきます。
そんな中で、私の東京に住む友人が、「こんなにみんなが自粛に反対し、東北のものを食べたり飲んだりして応援したい、と言っているのだから、蔵元はぜひ匿名のTwitterではなく、自分の名前と顔を出して、このことを世間に伝えてもらえないか」こう依頼されます。「YouTubeで、被災地の蔵元からお願いとして、話してもらえないか」こうお願いされます。
しかし、2011年3月下旬と言えば、震災からまだ一か月もたっていない時期で、テレビやラジオは全ての企業がCMを止めて、AC(公共広告機構)のCMしか流れていません。今企業名を出して何か言うことはリスクではないか。こんなことも頭をよぎりましたが、私は即決して「やりましょう」と答えます。それはなぜか。その時の私は、津波で亡くなった友人のためにも、生かされた自分が精一杯岩手や東北のためになることをする、と誓っていたから、リスクなど恐れずに、正しいと思うことを信念を通してやり抜くことこそ大事だと感じていたからです。
そして、交流のある、岩手の酒蔵「あさ開」さんと「月の輪」さんとお話をして、3蔵でこのプロジェクトを「ハナサケ日本」とし、被災地の酒蔵からお願い、としてYouTubeの映像をつくります。
折しもこの時期、桜の季節で、花見では日本酒がとても飲まれる季節。そんな中、その当時の東京都知事が「花見なんてしてないで、自粛しなさい」とテレビで報道され、花見を予定していた公園などは一斉に花見の中止を決めていました。
花見と日本酒、切っても切れない古くからのつながりを生かし、「自粛せずに被災地東北のお酒を飲んで花見をしてください」という形でYouTubeを作成させていただきました。
4月2日にアップされたこのYouTubeは、瞬く間に日本中に知れ渡り、アップして2日で5万ビューを記録。とんでもないスピードで賛同の気持ちの元、全国の方々に見られて行きます。その勢いに、テレビ局が気づき、NHKから連絡があります・・・。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp
本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授
久慈 浩介