特別寄稿 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第23回
昨日盛大なにぎわいをみせた日本酒フェスティバル、Kampai Toronto vol2。
このイベントに参加した岩手県、南部美人の蔵は3.11東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。
2014年3月11日。東日本大震災から3年が経過し、4年目に入りました。岩手をはじめ、東北の被災地では、2014年3月11日、午後2時46分に多くの場所で黙とうがささげられました。また東北だけではなく、日本全国、そして世界からも多くの祈りが東北に届けられました。震災から3年経過して、風化を感じる時も多くなりましたが、この日だけは特別の祈りを多くの方々からいただき、東北人として、感謝の気持ちでいっぱいです本当にありがとうございます。
3年という月日は、東日本大震災の遺族にとっては長く感じる人、短く感じる人、様々だったと思います。私たち東北の人間にとっても長かったのか短かったのか、どちらなのかわからない人も多いのですが、間違いなく言えるのは、復興は遅れている、だと思います。
確かに、瓦礫は被災地で見なくなりましたし、工事もかなりたくさんの方々が被災地に入り忙しそうに進んでいますが、まだまだ仮設住宅を出られない方は何万人もいますし、仮設住宅に住む計画まで行っていない人も多くおります。震災関連死は震災の直接死よりも増えましたし、お年寄りは自分が生きているうちに仮設住宅を出られるか、いまだに保障されずにいます。
人口流出も大きな問題で、若い世代や子育て世代が特に流出しており、盛岡市など便利で仕事がある内陸部の都市に移り住むケースも増えています。
心の復興も遅れており、未だに前を向いて生きていけない人も多く、震災関連の自殺も増え続けております。
震災から3年たって、色々な問題も出てきておりますが、私が一番問題だと感じているのは、やはり東日本大震災の「風化」です。
人々があれだけ大きい天災だった東日本大震災を忘れていき、さらには日本国政府も震災からの復興よりも消費税造成やTPP、憲法改定などの問題に取り組む姿勢を明確にしており、選挙では「震災からの復興を1番に考えます」と公約しておきながら、震災からの復興は後回しになっている感じがしてなりません。
被災地にとって、「忘れられる」ということがどれだけつらいことか。そしてどれだけ疎外感を感じるか。自分たちのミスでこのような結果になったのならば仕方ないとしますが、この東日本大震災は「天災」です。誰も悪いことをしているわけではないのに、たまたま東北という大きなエリアを襲った天災なのです。これが東京に起きていれば、もっと速いスピードで復興されていったでしょう。東北だから、どうしても田舎は後回し、という今までの流れを感じてしまいます。
震災から3年、4年目を歩み始めた東北の各地首長は、4年目が正念場の年、と公表している方も多く、今年どれだけ目に見える復興を進められるかが大事になります。東北人は我慢強いですが、もう限界にきています。どうか震災からの復興を忘れずに、これからも世界中から応援をいただきながら、私たちは被災地で頑張り続けていきたいと思いますので、引き続き応援と、風化させない気持ちをいただければと思います。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp
東京農業大学客員教授
久慈 浩介