特別寄稿 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第20回
前回もお話させていただきましたが、東日本大震災で大きな被害を受けた蔵元の震災当時の状況と、今現在どのような復興を遂げているかのお話を今回も続けさせていただきます。前回は岩手県でしたが、今回はお隣の宮城県となります。
宮城県は、東北の首都である仙台を持つ県で、その仙台が震災では被災しました。仙台市では沿岸部で200名の遺体があがるなど、100万都市の機能も停電などで止まってしまい、大混乱を起こしました。
その宮城県ですが、実は地盤が弱いことでも有名で、宮城県南部の内陸地方は東日本大震災前の大きな地震でも度々地滑りなど大きな被害を出しておりました。宮城県は、津波で被害を受けた沿岸部の蔵元と、内陸でも地震そのもので大きな被害を受けた蔵元に分かれます。
まず内陸部は宮城を代表する「一ノ蔵」さんですが、大変な被害を受けました。数万本の貯蔵酒が割れ、蔵自体にも地震により大きな傷跡が残りました。さらに「愛宕の松」さんは、同じく内陸部ですが蔵がほぼ全壊し、移転を余儀なくされるほどの大きな被害でした。沿岸部では、これも宮城を代表する「浦霞」さんが、津波の浸水被害で数百年続く蔵が水に浸かってしまいました。
さらに、大きな被害を受けたのが今回の震災でも大きく報道された、石巻市にある「日高見」さんで蔵は半壊、津波により浸水、と死者が出ない方がおかしいくらいの大きな被害でした。日高見の蔵元はその時、お客様と海沿いの寿司屋さんで接待をしていたそうで、命からがら逃げて無事でした。さらに蔵元の家族は松島にいるということで、夜通し歩いて家族と子供を探しに行き、何とか再会を果たしたそうです。
宮城県も気仙沼など大きな被害を受けた地域の蔵はまだまだあるのですが、どの蔵も震災後の次の年に新酒を醸すほど復興し、現在に至っています。特に、宮城県は東北でも大手の「一ノ蔵」さん、「浦霞」さんが早期に復興し、東北の地酒のリーダーとして様々な行動を起こしてくれたおかげで、東北全体の酒蔵の復興が早まったと言っても過言ではありません。
さらに、震災の年の2011年5月に開催された全国新酒鑑評会では、震災後、出品状況など全く整っていない状況にも関わらず、宮城県は何と全国NO1の金賞受賞率を獲得し、震災に負けない宮城県を大きく内外に伝えることが出来ました。
宮城県の蔵元の早期復興は間違いなく他の東北の蔵元の背中を押してくれたと思っています。次回は福島県のお話をさせていただきます。
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東京農業大学客員教授
久慈 浩介