ナイアガラが誇る極上アイスワイン|#トロントグルメ部|食の編集部食べ歩きシリーズ|特集「 初夏にこそ映える、冷たい贅沢ナイアガラの宝石、アイスワイン」

カナダの冬が生んだ奇跡の一滴、アイスワイン。なかでもナイアガラは世界屈指の産地として知られ、その甘美な味わいはまさに芸術。今回、TORJA食の編集部が選んだのは、確かな実力と個性を兼ね備えた4つのワイナリー「Pillitteri Estates Winery」「Henry of Pelham」「Stratus Vineyards」「Château des Charmes」。それぞれが誇る代表的なアイスワインと共に、こだわりや魅力を徹底紹介。
#01 カナダ・ナイアガラの名門ワイナリーが誇る極上アイスワイン
PILLITTERI ESTATES WINERY
ナイアガラを代表する家族経営のワイナリー、PILLITTERI ESTATES WINERY(ピリテリ・エステーツ・ワイナリー)は、世界最多のアイスワイン受賞歴を誇る名門。1993年の創業以来、厳しい冬の気候を逆手に取り、独自の技術と哲学で高品質なアイスワインを生み出し続けている。

同ワイナリーの象徴とも言えるのが「Family Reserve」シリーズ。カベルネ・フラン種を使用したFamily Reserve Cabernet Franc Icewineは、赤系果実の芳醇な香りと繊細な酸味が調和した、まさに“赤の芸術品”。

一方、世界中にその名を知られるFamily Reserve Vidal Icewineは、トロピカルフルーツやハチミツを思わせる濃厚な甘みが特徴で、アイスワインの王道ともいえる味わいを提供してくれる。

2025年の注目は、希少なPinot Noir Icewine。ピノ・ノワールは気温や収穫のタイミングに極めて敏感なため、アイスワインとして仕上げるのは非常に困難だが、Pillitteriの技術力と自然との対話によって、まろやかで果実味豊かな1本に仕上がっている。華やかな酸味と繊細なタンニンの余韻が心地よく、ワイン通もうならせる逸品だ。
ワイナリーからも紹介されたラインナップは、Racina Pinot Noir Icewine、Reserve Icewine Riesling 375ml、そしてReserve Icewine Vidal 375ml。それぞれが品種の個性とナイアガラの大地を映し出すような、唯一無二の甘美な世界を描き出す。
#02 伝統と革新が生むナイアガラの美酒
Henry of Pelhamの個性派アイスワイン

ナイアガラの地で200年以上にわたりブドウ栽培の歴史を刻むHenry of Pelham Family Estate Winery(ヘンリー・オブ・ペラム)。その礎は、カナダ建国以前にこの地に移住したペラム家の祖先にまで遡る。現在は家族経営のもと、サステナブルな農法と卓越したワインづくりで、国内外の愛好家を魅了している。
注目すべきは、ワイナリーが位置するShort Hills Bench(ショート・ヒルズ・ベンチ)という特別な小区画。冷涼な夜と急速に訪れる冬の寒波が、果実の成熟と凍結の絶妙なバランスを実現し、世界有数のアイスワイン生産地としての地位を築いている。
看板のひとつが、2019 Riesling Icewine。デリケートな皮を持つリースリングは、アイスワインにするには最も難しい品種だが、Henry of Pelhamはその繊細さを美点に変える。柑橘や白い花を思わせる香りと鮮やかな酸、蜂蜜やドライフルーツの風味が重なり、熟成によりさらなる深みを増すポテンシャルを秘めている。セードされたフォアグラやブルーチーズ、あるいは新鮮な果実との相性は抜群。
そしてもう一本、異色の個性を放つのが2018 Red Icewine。通常アイスワインではあまり見かけない赤系ブドウを使用し、ストロベリーやラズベリーの鮮烈な果実味が口いっぱいに広がる。ブリーチーズやナッツを添えたアペリティフにも、ベリー系のデザートにも寄り添う華やかな1本だ。
2本ともステンレスタンクで醸造され、果実本来の美しさがストレートに表現されている。
#03 ナイアガラのアートワイナリー
Stratus Vineyards
Stratus Vineyardsは、サステナブル農法と高度なブレンディング技術を追求する、まさに“ワインづくりのアトリエ”。その緻密な醸造哲学は、アイスワインの世界でも独自の輝きを放っている。建築美にもこだわった近未来的なワイナリー空間も特徴的だ。
2023年ヴィンテージのStratus Riesling Icewineは、カナダの著名評論家David Lawrason氏より94点を獲得。パパイヤやオレンジ、蜂蜜の芳醇な香りと、厚みのある甘さ、そして引き締まった酸が見事に調和した逸品だ。
一方、Stratusの個性が際立つのが赤のアイスワイン。2023 Stratus Icewine Redは、プティ・ヴェルド、カベルネ・フランなどをブレンド。チェリーやラズベリージャムにシナモンが漂う、深く贅沢な味わいに仕上がっている。
色、香り、構成すべてに洗練が宿るStratusのアイスワインは、まさにナイアガラが誇る芸術品である。
#04 格式と革新が融合するシャトーの美学
Château des Charmesの極上アイスワイン
ナイアガラ・オン・ザ・レイクの中心部に佇むChâteau des Charmes(シャトー・デ・シャーム)は、カナダのワイン史に名を刻む名門ワイナリー。創業者ポール・ブスコは、フランス・ブルゴーニュ出身のワイン醸造家であり、1978年にこの地に理想のブドウ畑を築いた先駆者でもある。ブドウ栽培から瓶詰めに至るすべてを自社で行い、「シャトー・スタイル」の精神を貫くその姿勢は、ワイン造りへの真摯な哲学を物語っている。
中でも高く評価されているのが、極寒の自然と人の手が織りなすアイスワイン。2023年ヴィンテージのVidal Icewineは、トロピカルフルーツやアプリコット、オレンジピールを思わせる濃密なアロマと、力強い甘みの中に繊細な酸が光る。若いうちから楽しめる魅力はもちろん、数年の熟成を経ることで、蜂蜜やドライフルーツのニュアンスが深まり、より複層的な味わいへと変化する。
一方、赤系ブドウを用いた希少な2018 Cabernet Icewineは、まさに“赤の極み”。完熟したカベルネ種から引き出されるチェリーやブラックベリーの凝縮感と、滑らかなタンニンが絶妙に調和し、スイートでありながらエレガントな仕上がりに。チョコレートやベリー系のデザートとの相性はもちろん、ウォッシュ系チーズと合わせることで、その深みがさらに際立つ。
いずれのアイスワインも、Château des Charmesが誇るブドウ畑の環境と醸造哲学の結晶だ。