ランナーのコンディショニング プラン集1|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第77回】

1.足首の管理
ランナーの場合、コンディショニングのベースを足首に設定することをお勧めします。理由は、走る動作において一番疲れが溜まりやすく走りに影響が出やすい箇所だからです。以前特訓に次ぐ特訓で足首が疲れ果てたサッカー選手の足首を緩めてあげただけで、翌日の試合で30%長く走るという事件が起きました(GPSを体につけて試合をしたので正確に走行距離が計測されました)。この時から足首のコンディショニングにより走りが変わるという確信を得ています。
【具体策】 ①床に上向きに寝て足の先が天井を向いている状態から足先を床方向に動かし動きを確認する。足先で床が触れれば合格。触れない場合、足首の角度を確認→②脛の外側にある筋肉をマッサージする(場所が判らない時は、足首を甲側に倒す時に動く筋肉を見つけて下さい)→③少しでも足首が床の方向に動くことを確認してください。

2.膝の管理
膝の管理の目的は、複雑な動きをする関節の負担を軽減して致命的な怪我を防ぐこと。膝を動かすメインの筋肉は知名度の高い大腿四頭筋とハムストリングスです。この筋肉のコンディショニングの基本はバランスを取ることです。何故かと言うと、太腿の前後につく幅広い筋肉なので、ランニングフォームのバラツキなどの理由で内側と外側で筋肉の疲れ具合が変わって来るからです。
例えば、ガニ股気味に走る選手は太腿の外側が硬くなるといった具合です。
【具体策】 太腿前面の筋肉のバランスを整える→①膝のお皿の上3センチくらいの所に太腿前面を横切る線をイメージします→②その線上を太腿の内側から外側に5ポイント深く押して硬い筋肉を見つけて、マッサージをする。
太腿後面の筋肉のバランスを整える→硬い床に直に座った時に痛くなってくるお尻の骨の下側辺りにあるロープ状の硬い筋肉をマッサージやストレッチで緩める。
太腿の筋肉の左右のバランスを整えるのは走る際の膝の動きに大きく影響します。
3.腰の管理
ランナーの腰の動きを妨げる大きな原因は腰椎から鼠蹊部を通って足の骨に付着する筋肉の疲れです。腰の左右に対で存在するので腰の動きに大きく影響します。
①鏡の前で膝を胸に向けて持ち上げる→②膝が胸に当たるくらい上げられれば合格→③膝があまり上がらない。膝が真っ直ぐ上がらないで内側や外側に上がってしまう場合はコンディショニングが必要。
【具体策】 あぐらをかいたポジションで鼠蹊部深くをマッサージする。
4.肩の管理
腕の振りに影響の出る肩の疲れを取る方法→◎床上に仰向けに寝て両肩が床につけば合格。×肩と床にスペースができる場合はコンディショニングが必要です。
【具体策】 肩関節を緩める→肩関節は色々な角度に動かすことが出来る=色々な筋肉がくっついているので、一つの方法でコンディションを整えることが出来ません。総合的なアプローチが必要となります。コンディショニングをするにあたり、痛い痛く無いという判断基準ではなく、肩の可動域を正確に見極めるなどが怪我を未然に防ぐのに大切です。ちなみに、肩の可動方向は、前後、左右、内外ローテーションの6方向です。少なくとも、この6方向へのアプローチが必要ということです。
少々ややこしくなってしまいましたのでTORJAの読者の皆様には、とっておきのショートカット方法を説明致します。理屈としては、6方向へのコンディショニングを丁寧に行うのが理想ですが、様々な理由により、そこまで出来ない人には、肩関節を直接緩めることにより最低限のコンディションを確保する方法があるのです。
①鎖骨の下の部分に指で触る→②鎖骨に沿って外側に指を動かす→③指が丸い骨に触れる→④丸い骨の上の鎖骨の間をマッサージする→⑤丸い骨と腕の間をマッサージする。肩関節が緩み肩の動きが改善されます。
5.肩甲骨の動きを良くする
壁や床と背中の間にテニスボールを挟んでボールを動かしながら肩甲骨の内側に沿ってボールマッサージする。肩甲骨の動きが改善されて肩関節がよりスムーズに動かすことができます。
6.足の甲の管理
長年の練習により足の甲に疲れが溜まっているランナーが多く、足先を観察してみると横から締め付けられて細くなっているケースがあります。足の甲を緩めてしっかりと地面を掴めるようになると走りが良くなるケースが多いです。
【具体策】 ①足の指を甲側に反らせて甲に浮き上がる腱を見つける→②5本の腱の間を親指で切るようにマッサージして緩める。
7.まとめ
これまで説明したような体の基本的なコンディショニングを整えると共に、自分のランニングフォームをスロービデオ撮影して各関節の可動域や可動方向を確認するのも大切です。①思いの外ガニ股で走っているから脚の外側が疲れ易い?②足首の外側で着地しているから捻挫し易い?③練習の疲れが抜けて無いから膝があがっていない?などの長年の問題点が露呈します。
ランナーの様に同じ動作を繰り返す競技の場合「???」と思う小さなブレが倍返しで体に負担となるので、繊細なアセスメントがとても大切です。
ブログ: 金メダルに導くマッサージセラピストの目線
こちらのブログでも色々なエピソードをご紹介しております。

カナダ公認マッサージセラピスト 青嶋 正
日本オリンピック協会/日本スケート連盟強化スタッフ/トレーナー
720 Spadina Ave. Suite 507 スパダイナ駅徒歩2分
電話 テキスト 647-828-0700
tadshiatsu@gmail.com
テキスト、E メールでのご予約をおすすめします。
FEATURE ARTICLES AUG 2022
トロントで 暮らし始めて vol.1
今回はコロナ禍前後にトロントで暮らし始めた人たちからの情報をもとに、彼ら彼女らがトロントライフで学んだり体験したことを中心に紹介する。