日本の本屋さんの夏をお裾分け!8月のトロントの本屋さん
こんにちは!今月の「トロントの本屋さん」もバンクーバーの岩崎ゆかりがお送り致します。
日本の夏は暑いの一言につきますが、お子様の夏休みに合わせて8月に一時帰国される方が多い季節でもあります。この時期はどこの本屋さんも夏フェスと称して文庫フェア対象の本がズラッと店頭に並んでいます。コロナの影響で帰省がなかなか叶いませんので、日本の本屋さんの夏をお裾分けしましょう。
まずは新潮社の「新潮文庫の100冊」から2作品です。
二宮敦人著『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』。著者の妻は「入試倍率は東大の約3倍。しかし卒業後は行方不明者多発との噂も流れる東京藝術大学」卒で家には木くずが舞い、生協で買ったというガスマスクが台所に鎮座となれば藝大に興味を持たない訳がありません。様々な学科に在籍する学生へのインタビューを基に奇想天外な話にへぇの連発です。
瀬尾まいこ著『あと少し、もう少し』。「部長の桝井は中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り、練習を始めるが…。元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人が県大会出場を目指して、襷をつなぐ。」大会までの思いを6人のランナーのそれぞれの視点から描く青春小説です。
同じ場面でも語り部によって異なる見方、感情の動きの描写が秀逸です。クラスにあんな生徒や先生がいたな、と思わず自分の中学時代に引き戻されること間違いありません!
集英社の「ナツイチ2020 ぼくらを強くする、言葉たち」と銘打つキャンペーンから、青木祐子著『これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~』は森若沙名子、27歳、彼氏なしで入社以来、経理一筋、きっちりとした労働と適正な給料というどこの事務所にも居そうな人の話です。過剰なものも足りないものもない、完璧な生活をおくっているはずだったのにある日、営業部のエース・山田太陽が持ち込んだ領収書は「4800円、たこ焼き代」。社内の人間模様が見えてきそうです。真面目すぎる言動から妙な誤解をされがちな森若さんですが見ている人はちゃんと見ているし応援しています!オフィス実務も勉強になります。付箋にセロテープ止め、マネてます(笑)!
最後にご紹介するのが、KADOKAWAの「カドフェス2020」から、渋沢栄一著『論語と算盤』です。2024年より新紙幣一万円札の顔となり、2021年のNHK大河ドラマの主人公にもなります。日本の実業界の黎明期を駆け抜けた渋沢栄一と言えば「道徳と経営は合一すべきである」と説き、企業家育成のため、経営哲学を語りました。論語の精神に基づき商売をし、儲けた利益は、みなの幸せのために使うと唱えます。維新以来、日本に世界と比肩できる近代の実業界の礎を築いた氏の成功の秘訣を論語に求めたこの書は大正時代に書かれた文体で簡単ではありませんが、吉沢亮くんがお話をしている、と想像しながら読んでみたらどうでしょうか?
それでは、次号でまた、お会いしましょう!
トロントにある日本の本屋さん
Blue Tree Books
Blue Tree Books(J-town内)では、日本の本や雑誌を販売しております。話題の本はもちろんのこと、英語・その他言語のテキスト等も取り扱っています。店頭にない商品も、もちろん日本から取り寄せいたします。是非気軽にお越しください。
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