第98回「価値観② / マルチカルチャーな国に来て・夫婦の価値観」|カナダ・トロントにある幼稚園の園長先生コラム。気付けば息子も大きくなりました…

前回は夫婦の価値観について少し触れ始めましたが、日本人同士でも分かり合うのは大変なのに、言葉も、祖国も、文化も、習慣も、宗教も、政治も…それぞれ違うバックグラウンドの人がパートナーとなると、英語が堪能な人であっても、より一層複雑な関係になるのは当然、とお話しました。食事や宗教、文化や習慣だって、結婚前は何でも受け入れられると思っていたことが『価値観の違い』で喧嘩になることだってあるのです。
価値観の違いとは、多くの場合それぞれが
を指すと言われています。
そして、どの様な内容がその価値観の違いとして挙げられているかという男女統計では、「金銭感覚の違い」が、男女とも共通だそうです。また、男性は「自分の考え方に対する理解がないことへの不満」、逆に女性も「自分の存在をないがしろにされることへの不満」が多いとのことだったそうです。お互いに相手を思いやる気持ちが欠けているとの現れなのでしょうか。
『価値観の違い』で喧嘩にならないように、また、お互いを尊重し、思いやることが大切とは分かっていても、それを実践するのは難しいものです。
例えば我が家で言うと、マークのトライアスロン・レース。マークはアイアンマンレースに出る程、何年も前からトライアスロンにハマっています。レースを始めた当初は、運動するのは健康にも良いし大賛成でした。しかし、深みにハマり出すとそのレースにかかる費用の高いこと!自転車や専用ギア…機材や装具に加え、トレーニング費やレース代等々、次から次へと。費用だけではありません。何より貴重な時間もです。トレーニングに費やす膨大な時間も、またトライアスロンについてくる怪我などもあると仕事にまで支障が出て来る始末です。
そこまでして何故トライアスロンなのか。その価値観が全く分からず、だんだん文句タラタラ、喧嘩になったこともありました。でも、喧嘩しても仕方ないので、トライアスロンに費やすお金も時間も、どうすればお互い無理なく納得いくように使えるのか話し合うようになりました。どの辺は諦められるのか、どこは譲れないのか。その上で一定のルールも決めます。
つまり、
*自分の「価値観」を押し付けない
*相手の価値観を否定しない
を当時実践していたんですね…。そして、私もマークに合わせてばかりにするのではなく、
*相手の価値観に関心を示す
ように試みたのです。
具体的に言うと、レースに一緒に観に行き、その雰囲気を一緒に味わったり、クラブの仲間と交流したりして自分も楽しめるように、結果、健康のことも念頭に、私自身も走ってみることにしたのです。そして、マークと一緒に簡単な5㎞や10㎞程度のマラソンに出るようになり、だんだん自分の価値観も変わってきたのです。
 そうなんです。自分の心掛け次第で価値観は変わり、世界も広がるものなのです!
 
 金銭的にも、時間的にもお互いの価値観をしっかり開示する事で、双方が心を開いて歩み寄ることが大切なのだと思います。マークも自分の大切にしたいことを丁寧に話してくれましたし、私も自分の意見をきちんと述べました。実際お互いが歩み寄れたお陰で、今では私もマークのレースを応援しに行くのがとても楽しみですし、自分が運動することによって私の健康不足も解消できました。そして結果、お互いの価値観が同じ(似ている)ことから、とても心地良い状態が出来上がったのです。
私がマークに理解を示すばかりではなく、逆の状況でマークが私に理解を示してくれたものの一つに犬の保護活動があります。我が家では犬のフォスター活動をしているのですが、これも初めは私の強い希望で保護犬をうちに迎え入れたところからどんどん深みにハマり、お金も時間も保護犬とその活動に費やして行ってしまったという、正に逆パターンです(笑)。
 それも、途中諸々の葛藤がありましたが、やはり話し合い、お互い歩み寄れたおかげで、マークも今では同じ価値観の元、共に活動してくれる様になりました。
 
 どちらの状況もその時は、価値観云々なんて考えて話し合ったことはありませんが、今思えばそうだったんだなぁ、とつくづく思います。「この人といると気が楽だなぁ。ホッとするなぁ。安心するなぁ」と言えるのはきっと、価値観が似ているからなのでしょうね。
50年も60年も長年夫婦されている方々からすれば結婚生活30年の私たちなんてまだまだひよっこですから、偉そうなことを言えた義理では全くないのですが(苦笑)。人生の大先輩の皆さまは、ひよっこのたわ言だと思って、軽く読み流して下さいませ。
池端友佳理
京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立、園長を勤める。













