イタリア:ローマ(1)|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第100回
ローマ:カナダ人教会(Santi Martiri Canadesi)

サレルノ(Salerno 3月号記)の合唱祭はディナー付きのガラコンサートで幕を下ろした。夜中の1時まであちこちのテーブルから歌声が聞こえていたが私の瞼はもう限界に来ていた。
翌朝、バスでローマに向かう合唱団を見送り、私は一人電車でローマ駅に向かった。これから二週間イタリア語学学校に通うことにしていたのでアパートの管理人に鍵をもらう必要があった。
夕方はローマ駅から少し離れたところあるカナダ人教会を探し当て、そこで夕方合唱団と合流して最後のコンサートに臨んだ。
カナダ人教会の外観はモダンな作りでこれまでの歴史的な建物とは違った現代版。
合唱団の一人が地下鉄でスリに財布を盗まれたと肩を落として私に言った。イタリアは4回目だが私は物を盗まれたことは一度もない。皆と別れ、駅前のアパートに戻る、次は自分の番だとは思っても見ずに。
ローマ:語学学校

クラス分けのテストがあった。入ったクラスは十人ほど。アメリカ人一人を除き、殆どがヨーロッパ人でイタリア語は3、4番目の言語。英語は皆すでに当たり前のように話す。私は午前の授業のみで、午後は宿題と観光に充てることにした。
5年前にも同じようなことをやったが、セストリ・ラヴェンテという風光明媚な海岸沿いの小さなまちで勉強よりは観光のお遊び気分だった。
あれから語学力が上がったというわけでもないが、高齢になってから始めたので簡単な日常に支障がないレベルでいいか、と満足していたのだが、今回の授業の進め方は超スパルタン。
ペアに分かれて、渡された書類の内容やオーディオで聞かされる会話の内容を想像でいいからイタリア語で互いに話し合うというもの。みなジェスチャーまじりにああだろう、こうだろうとしゃべる。
パートナーチェンジになり同じことを幾度か繰り返す。理解度が異なる相手から学べ、という教授法のようだ。
私は自分に何が足りないか分かっただけでも益になった、というところか。
ローマ駅(Terminiテルミニ)の利便性

ローマ駅は二つあるがメインがローマ・テルミニ駅だ。アパートから駅まで歩いて3分という好条件なので、広い駅の構内や外構はくまなく見て歩いた。観光客の目が届かないところにホームレスもいる。清掃も日本やカナダほど行き届いていない。


近代的な駅ビルには寿司屋、ユニクロもあり、フードコートのピザは超美味しかった。食事の材料もここで買えるし、コーヒーショップで宿題もできる。私のお気に入りスイーツはクリームチーズ入りでサクサクしっとり感のスフォッリヤテッラ。

さて、ローマで行動を起こすのには地図が必要だ。残念ながらデジタルのおかげで観光客用の無料地図なるものは全く姿を消してしまった。自分の位置確認ならスマホでいいのだが、私は全体像を見たい。
バスターミナル側に本屋を見つける。イタリアの地図とローマの地図を手に入れれば鬼に金棒。ローマ・テルミニ駅はバス、地下鉄、遠近路線発着駅でもあるため移動にはもってこいだ。
ローマ:スリ

ある晩、三人テノールのコンサートに行こうとバスに乗った。降りて、まず夕食を済ませ……気がつけば財布がない。確かバスのパスは財布にしまってバックパックのジッパーに入れたはず。えっ、まさか?やられた〜!
幸い別のポケットに現金を入れておいたので食い逃げにならずに済んだが。盗まれたのはカナダの運転免許証、ヘルスカード、クレジットカード2枚、現金少々。
盗みをする人は身なりに拘らず紳士淑女風でも信用できない。混んだ乗り物に乗る時は荷物を前に抱えるようにすべきだった。
ローマ駅の一番端に警察とはっきり書かれていない警察の事務所へ行き聞き取り調査を受け、連絡先など伝える、戻ってくるはずはないと思いつつ。
アパートの管理人さんからは自分の名前を言ってくれるな、と言われたので語学学校の連絡先を使わせてもらった。管理人は警察に知られたくない理由でもあるのか、いまだに謎めいている。

石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、『久遠に逢う』東京・熊本、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”。PPOC認定会員、日本写真協会会員、AFP、ESL教師。www.makikoishiharaphotography.com
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