第74回「海外で着物を着よう」|カエデの多言語はぐくみ通信
日本から海外に持ってきた、または日本の実家の箪笥に眠っている着物はありませんか?海外で着物を着るととても喜ばれますよ。
海外で着物は憧れの的
海外生活をしていると、日本の文化を改めて意識する機会が多くあります。私は、母がバブル時代にたくさん作った着物がもったいないので海外で着始めました。着物で海外の街を歩くとたくさん声を掛けられます。「美しいですね」「それは着物ですか?」と、まるで美術品を見るような眼差しを向けてくれます。「今日はほんとうにラッキーです!」とストレートに喜びを表現してくれる人もいました。
着物を着ると目立つので勇気が要りますが、海外の人に本物を見せたいという使命感もあり着ています。私は、洋服やベルトと合わせたりという現代風な着方はせずに、できるだけ原型が分かるように着ます。注目されるので女優気分も味わえますが、これは単なる着物効果で、脱げばただの人という現実は十分承知しています。
着物の奥深さとは
着物の魅力は形だけではなく、その「柄」にもあります。着物といえば思い浮かぶ柄に「吉祥文様(きっしょうもんよう)」があります。縁起の良いものをモチーフに、桜、紅葉、松竹梅、鶴亀、扇など、草花や動物、道具を題材にした文様が、平安時代から脈々と受け継がれています。ルイ・ヴィトンが、日本古来の市松模様を商標権侵害として訴え、敗訴した事件を覚えていますか?訴えられた仏具屋さんが気の毒でした。
「道長取り」という文様は、色々な模様の和紙をちぎって斜めに貼り合わせたような、平安時代を彷彿とさせる豪華な柄です。紫式部のパトロンであった藤原道長が好んだと言われています。
歌舞伎の世界を描いた映画『国宝』を私は3回観ましたが、その豪華な衣装に目を奪われました。その中で、記号のような文様に目が留まりました。調べてみると、「源氏香」という柄で香道に由来します。「源氏香」とは、「源氏物語」54帖にちなみ、5種類の香りを2つ少ない52のパターンに組み合わせたものを聞き当てる遊びです。パターンには「夕顔」「若紫」など巻名が付けられ、全52の組み合わせの回答を、縦線と横線を組み合わせた幾何学的文様で表したものが、江戸時代から着物や道具に使われています。
このように、柄一つ一つに意味があり、日本の歴史や文化が垣間見え好奇心をそそられることが、私にとっての着物の魅力でもあります。
子への日本文化継承
海外で子育てをしていると、「日本文化をどう子どもに伝えるか」という課題に直面します。どの日本人や国際結婚家庭も、言葉や食、行事を通して海外で子どもに日本文化を継承しようと涙ぐましい努力をしています。その中に、着物を加えてみるのはどうでしょうか?
親がお正月やイベントのときに着物を着るだけでも、着物を身近に感じられる文化体験になるでしょう。また、子ども用の浴衣を着せると、周囲の人からあたたかい声をかけられるので、そうした交流を通して、自分のルーツを意識したり、文化に誇りを持つようになります。
トロントにも着物レンタルサービスがあるので利用するとよいでしょう。
中古着物が安い
着物は高いというイメージがありますが、近年はリサイクル着物が安価に手に入ります。数年前の情報では、日本で箪笥に眠る着物は8兆円規模だそうです。着物を着る人が減り、母親や祖母世代が買った着物を手放す人が増えています。買ったときは数十万円したものでも買取価格は安いらしく、リクルショップやオンラインを通して、物によっては数千円で買える時代になりました。
また、コロナ禍で着物の着方を教えてくれるユーチューバーに人気が出て、箪笥着物を引っ張り出したり、リユース着物を買って自分なりのコーディネートを楽しむ若い人が増えました。リユース着物は今では成長産業だそうです。
私は日本へ一時帰国する度に着物のリサイクルショップに行きますが、ここ数年で店舗数がみるみる増えました。他にも、オンラインショップで買ったりオークションで落札したりしています。今では、複数の着物通販サイトが海外への発送も請け負っているので、試しに覗いてみてはどうでしょうか?
サステナブルと技術継承
年間に捨てられる着物が50万枚とも100万枚と言われています。私たちは着物を手放した人たちに感謝しつつリサイクルで手に入れた着物を着ることで、廃棄着物の減量に貢献することができます。
また、着物を着る人が増えるということは、自分好みの新品の反物を買って、マイサイズで着物を仕立てる人も増えていきます。着物や帯の反物には、さまざまな伝統技術が凝縮されています。糸づくりにはじまり、染め、手描き友禅、織り、絞り、刺繍など、多くの技法が組み合わさって一枚の布が作られます。こうした産地が日本全国に点在しています。
しかし、技術者の高齢化や後継者不足で廃業が相次ぎ、技術の継承が難しくなっています。リサイクル市場には、今では作ることができない希少着物が混じっていると聞きます。着物を着ることで技術後継者が少しでも増える可能性も出てきます。
残念ながら、着物は取り扱いが難しいのは確かです。絹の着物は海外で気軽にクリーニング店に出したり、家で洗濯することもできません。私は、シミを付けたら自分で処理するか、日本への一時帰国時に悉皆屋(しっかいや)に持っていこうと思います。汚すのが怖くて箪笥の肥やしにするなら、汚れても着てあげたほうが、着物も作った人も喜ぶと考えています。
次の一時帰国時に、実家に眠っているお母さんやお祖母さんの着物を取り出してみてはいかがでしょうか?
MBS NEWS https://youtu.be/_dyg2b7QXL0?si=Q4ElQqyROl5u80VM
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