第69回「海外在住者あるある・ 親の滞在編」|カエデの多言語はぐくみ通信

国際結婚は、グローバル化が進む現代では珍しいことではなくなってきました。結婚生活や子育てをどこでするか。日本か海外かの選択は、その後の生活や家族関係に大きな影響を与えます。
日本で暮らすメリット
日本に住む最大のメリットは、日本人配偶者が言語に困らないこと、安全であることと日本食がいつでも食べられることでしょう。
役所や病院、銀行などの煩雑な手続きも自国なのでスムーズに進みやすいですし、日本の治安は良く、銃を使った凶悪犯罪に遭う確率はとても低いです。日本食材はいつでも手に入り、外出すれば美味しい食事を比較的安価に楽しめることは、食文化が乏しい北米に住んでいる私には羨ましい限りです。
自分の家族がそばにいることはメリットで、私はカナダ人夫と結婚して2人の子どもを日本で産みましたが、出産時やその後の職場復帰の時は、家族におおいに助けてもらいました。
そして、日本の初等中等教育の質は高く、生徒の学習到達度(PISA)は世界トップクラスです。子どもは日本語と日本文化を放っておいても覚えてきてくれますし、学校では料理、水泳、裁縫まで教えてくれて、集団生活の基本を掃除や学級活動を通じて指導してくれる特活(TOKKATSU)は、世界でも注目されています。
日本で暮らすデメリット
日本に住む場合、外国人配偶者には、生活や仕事面で大きなチャレンジが待っています。また、それを支える日本人配偶者の負担も大きいのです。
まず、漢字のある難しい日本語の壁が立ちはだかります。日常会話をこなせても、役所の手続きや専門的な書類の日本語は非常に難しく、なかなか自立しにくい状況になります。日本在住時、夫はビザ手続きは自分でやっていましたが、その他の公的な対応は全部私が引き受けていました。そして、日本語が流暢でない夫の日常的な通訳は私の役目だったので、それもかなり重荷でした。
子どもに外国人配偶者の母国語をどう教えるかも大きな問題です。しかし、私の子どもの3か国語教育の経験から、日本での英仏語などの主要外国語教育のほうが、海外での日本語教育より楽です。
そして、日本語を話せない外国人は職業が限られます。長時間労働が問題視される日本では、外国人がキャリアを築きにくい現実もあります。日本で夫がJETプログラムの英語講師をしていた30年前は、待遇はかなり良かった記憶があります。しかし、今では安価なオンライン英会話があるので、英語講師だけで日本で生活するのは難しいかもしれません。
また、外国人としての存在が目立ちやすく、場合によっては差別や偏見に直面することもあるでしょう。夫は、日本でスーツを着て自転車に乗っていただけで、何度も警官に止められ職務質問されていました。
海外で暮らすメリット
どこに住むかで大きく違うとは思いますが、カナダに限って言うと、日本人配偶者でも英語を話せるとかなり暮らしやすいです。国によっては国籍を取らないと安定した仕事に就けないところもありますが、カナダでは永住権があれば、選挙権以外はほとんどの権利が保障されています。
また、カナダではワークライフバランスを重視したり、家族であっても個人の自由を尊重する文化が根付いており、日本よりも働きやすかったり、無駄な干渉を避けられる場合が多いです。
特にヨーロッパは有給休暇や育児休暇制度が手厚く、その中でも北欧は社会保障制度が整っていて幸福度が高い点は魅力的です。
カナダは、ヨーロッパほどには休暇が多くはありませんが、年に一度の長期休暇なら取りやすく、子育てに関しても周りの理解があり、子どもの発熱や行事のための休みや時短を取ることになんら気兼ねはいりません。そして、多様性を重視しているため、差別がないと言えば嘘になりますが、異文化に寛容な部分が大きく、多文化のバックグラウンドを持つ子どもを育てやすい環境でしょう。
海外で暮らすデメリット
海外生活での言語の壁や文化の違いは日本人配偶者に重くのしかかります。英語など、日本で習ったことのある言語ならいざ知らず、未知の言語を一から学ぶ場合の負担は大きいでしょう。現地の言葉が流暢でないと仕事を見つけにくいことは、どの国でも同じだと思います。
国際結婚で意外と見落としがちなのは、外国人配偶者に日本での在住経験があるかないかです。夫は7年日本に住んだことで、海外生活の大変さを知っており、また、日本人や日本文化を理解しているので、私の根底にある日本人的なものの考え方でも汲み取ってくれます。子どもの日本語教育にも協力的でした。
言語には会話レベルと教科レベルがあります。海外で難しいのは日本語を教科レベルまで引き上げることです。ヨーロッパの人は楽に何か国語も話せるので、子どもの日本語教育にも楽観的で、土曜日に日本語学校へ送る必要などないという外国人夫が多いのです。日本語はヨーロッパ言語から最も遠く、海外で楽に習得することはほぼ不可能です。
最後に、海外在住だと親の介護や冠婚葬祭に関わるイベントに参加しにくく、里帰りの旅費負担が重く、頻繁な帰国が難しいのが実情です。国によっては、ビザや在留資格があっても安定した滞在が保証されない可能性もあります。
大切なのは想像力と工夫
日本に住むにしても海外に住むにしても、国際結婚の生活には必ずメリットとデメリットがあります。そして、海外生活で苦労している相手の立場に立つ「想像力」と、足りない部分を補い工夫する「適応力」が不可欠ですね。
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