第70回「同窓会って楽しいのだろうか」|カエデの多言語はぐくみ通信
高校の還暦同窓会がありました。私は海外在住なので参加しませんでしたが、LINEグループに追加され、たくさんの写真がアップされているのを見ました。正直なところ、同窓会の何が楽しいのかが分からないのです。
記憶が曖昧すぎて怖い
昭和のまだ子どもが多かった時代の高校なので、1学年たしか450人でした。そのうち150人が参加した大きな同窓会です。3分の1は参加したので、なかなかの参加率ではないでしょうか。
しかし、アップされた写真の顔を見ても名前を読んでも(旧姓があっても)、覚えがないのです。部活で一緒だったグループとは日本への一時帰国時に会ったりするのですが、会話に高校時代の色々な人の名前が出てきても、まったく記憶がよみがえりません。
40年以上会わなかったら初対面も同然で、自己紹介から始まって、今どこに住んでいて、何をしてきたという話から入るということになるのでしょうか。中にはどうしているかな、と思い出せる生徒もいるのですが、その人たちは来ていなかったようです。いくら同じ学校に通っていたとはいえ、ほぼ初対面の人と話して盛り上がれるのか疑問です。
青春を懐かしめない自分
同窓会が楽しい人は、きっと高校時代をキラキラした思い出として持っている人でしょう。覚えているのは、当時10代の青春を謳歌することに皆一生懸命で、私は、体育祭や文化祭、クラブ活動にはしゃぐクラスメートたちを横目で見ている地味な生徒だったと思います。
自分もクラブ活動はしていたけれど、好きだからというよりは、どこかに所属しないと修学旅行がひとりぼっちになるという、恐怖心からクラブに入っていたように思います。
同窓会の催しとしては、恩師たちからの挨拶、特異な経験のある卒業生のスピーチ、卒業アルバムの写真のスライドショーと、文化祭で作った映画の上映。制服を着た初々しい姿に「懐かしいね」と盛り上がったようです。私は制服姿の自分を見たいとも思いません。
学校への違和感
私が通っていたのは公立の進学校で、地元では親がちょっと子どもの自慢話に使えそうな学校でした。しかし、放っておいても生徒は勝手に勉強して大学に入ってくれるので、当時の教師陣は授業も工夫がなく、進路指導もほとんどしてくれませんでした。
高校2年にもなると皆掃除をちゃんとしないし、女子は体育祭に使うクラス全員お揃いのハッピを男子の分まで縫わないといけないし、かといってお礼も言われず、まとまりがなく、私は学校の雰囲気そのものが好きではありませんでした。
私はある先生に、宿題をレポートペーパーに書くところをノートで提出したことで、クラスの前で叱責されたことがあります。それも含めて人生の先輩として尊敬できる教師が学校にはいませんでした。なので、その人たちを同窓会で恩師と持ち上げる気持ちにはなれません。
高校時代よりもその後の方が濃い
私にとって本当に濃い経験は、高校卒業後にありました。留学、海外移住、異文化の中での就職、そして独立してフリーランスとして働く今。過去よりも未来をどう切り開くかに関心があり、わざわざ高校時代を振り返る必要性を感じません。
数年前から毎年行っているフランス語学留学では、若いクラスメートや先生と飲みに出かけたり、スリに遭い、フランスの警察に届けてもけんもほろろの扱いを受けたりと、今の自分を語れるエピソードには事欠きません。けれど、同窓会の場で話しても「すごいね」で終わってしまいそうに思うのです。
カナダ人夫も暗黒の高校時代
夫に日本の高校が楽しくなかったという話をすると、彼もまったく同意見でした。夫はトロント近郊の田舎町で高校に通いました。大学に進学する若者もわずかで、大半は高校卒業後すぐに地元で働き、結婚して家庭を築くという人生を当然のように歩んでいました。
夫は早く田舎を出たい気持ちでいっぱいで、4兄弟の中でただ1人大学に進学するためにトロントに出ました。そのため、地元にとどまることに迷いのない同級生や兄弟たちとは価値観が大きく食い違い、今では会話がかみ合いません。カナダに同窓会文化があるのか知りませんが、あっても夫は絶対に参加しないでしょう。
退会という選択
同窓会に行った友人の話を聞くと、スピーチを頼まれた1人が、反ワクチンを唱えたらしいのです。そして、その場にいた誰も反論しなかったようです。ただ黙ってその場をやり過ごす集団の空気は、昔、私が高校時代に感じていた違和感と同じです。かつての同級生たちと今の自分は、あまりにも価値観がずれてしまっているようです。
私はその話を聞いて、同窓会のLINEグループをそっと退会し、ついでに部活で一緒だったグループも退会しました。彼女たちとの会話にも、親の介護や自分の健康問題、趣味の話題しか出てこないからです。人生のある時期を一緒に過ごしたことはとても素敵なことですが、だからといって話が合わなくなっているのに、無理にグループを続ける必要はないと思います。
「同窓会って楽しいの?」という問いに、答えは、「楽しめる人は参加すればいい」です。私は、同窓会で過去を懐かしむよりも、まだ見ぬ未来の景色を楽しみにしています。
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