漆器の触感|金継ぎ開拓民のお茶休憩

「ずっとこうしてキスし続けていたい」
Kintsugicaのパーティで、漆塗りのスプーンやお猪口を初めて使ったカナダ人の生徒さんの言葉です。
漆塗りには様々な技法がありますが、多くの方が思い浮かべるのは、赤や黒の色で鏡面のように仕上げられたものではないでしょうか。鏡面仕上げの表面は滑らかですが、撫でてみるとスリップするようなつるつる感ではなく、指紋に吸い付くようなしっとりとした感触であることが分かります。

この特徴は、指先よりも敏感な唇で触れると、より違いを感じ取ることができます。
Kintsugicaアトリエのパーティでは、生徒さんにたちに様々な漆器を使って貰っています。汁物でお椀を、日本酒ではお猪口や平盃を、デザートではスプーンを。その時に皆さん驚かれるのが、漆器の質感から生まれる体験です。
想像してみて下さい。「キスし続けていたい」と思うほど、しっとり柔らかで、滑らかな器から唇に流し込まれる酒を。それは味以上の交感であり、香り以上の物語をもたらしてくれる体験となるのです。
実際、その体験は味の印象をも変え得ます。日本酒の種類によって変化の仕方に違いが出てきますが、同じような形の、異なる素材(ガラス、陶器、銅器など)で作られた器よりも、酒がすんなりまとまりをもって入ってくることが多い印象です。
また、漆器は木の器ですので、とても軽く、熱い汁物を入れても高台まで熱さが伝わらず、手で保持することができるのも特徴です。
今月より、ロイヤルオンタリオ博物館にて、日本の美術品と人間の感覚との深い関係に焦点を当てた展示が始まります。金継ぎを含む漆芸・陶芸のみならず、様々な美術品・工芸品を間近に見ることができ、また幾つかは手にとることもできます。ぜひ訪れてその質感を堪能してみて下さい。
— Material Encounters in Japanese Art — 2026年4月4日〜9月7日





