伝統の道を拓く⑦ 《 金継ぎの価値を左右する正統性 上》|金継ぎ開拓民のお茶休憩
海外には、化学接着剤と金色の粉を用いて、破損した器の接着と破損箇所の金装飾を行う工作があり、それが「Kintsugi」という言葉を伴ってビジネス化されています。実際の金継ぎと違って数時間で完了しますが、フードセーフではないので実際に日々の中で使えるものにはなり得ません。
このビジネスに携わる人々が着目しているのは、「インスタントに消費できる回復物語/体験」と「それを美化する金色の線」です。
金継ぎは、私たちのご先祖様がその感性で捉え、知恵で考え、コミュニティーや自然と折り合いをつけて生きてきた果てに生まれた技法のひとつです。その看板の後ろには、膨大なる歴史と文化と知恵の集積があります。
縄文時代には既に破損した器を漆で修復し始めており、近世以降は蒔絵の技法も取り入れながら、時に破損箇所が目立つよう、時に馴染むように仕上げてきました。
金継ぎは全て天然素材を使用するために何週間もかかりますが、そのお陰で食品や飲み物を入れてまた使い続けられる器に仕上がります。
このバックグラウンドは紛れもなく金継ぎの価値を支える重要な要素であり、また漆畑の運営、漆掻き職人、漆掻きの道具職人、筆職人などの伝統産業を支えていく上でも、何かに置き換えて良いものではありません。
消費社会のスピード感に乗った技法を広めることは、金継ぎの認知度を向上させるかもしれません。そこから正統な金継ぎを知る人もいくらかは出てくるかもしれません。
しかしながら、地球上で実践されている「キンツギ」と発音する技法の90%以上がそのような技法である現状を鑑みると、私たち日本人が行わなければならないことは、正統な金継ぎの地盤が揺るがないようしっかり固めていくことなのではないでしょうか。







