【アルミホイル包み和風デミグラスハンバーグ】アルミホイルに宿る、和の技法。うどん屋さんが挑んだハンバーグの新境地思い出と重なる、あの一皿への期待|Zen Sanuki Udon|食の編集部食べ歩きシリーズ#トロントグルメ部
ハンバーグが好きだ。なかでも、アルミホイルに包まれ、ナイフを入れた瞬間に湯気とともに立ち上る香り、そして濃厚なデミグラスソースに包まれたあの一皿は、個人的な記憶に深く刻まれている。あの「開ける瞬間」の高揚感と、肉汁があふれ出すあの光景は、何度思い返しても色褪せない。
そんな記憶を胸に、「Zen Sanuki Udon」が打ち出す新作「アルミホイル包み 和風デミグラスハンバーグ」を試食した。構想段階から話を聞いていたこともあり、正直に言えば期待は自然と高まっていた。だが目の前に現れた一皿は、単なる再現にとどまらず、確かな技術で再構築された新たな完成形といえる仕上がりだった。
こだわりのうどん屋さんが仕掛ける、意外な一皿

トロントで本格的な讃岐うどんを提供する店として知られる「Zen Sanuki Udon」。自家製麺と、化学調味料に頼らず自然素材から引き出す和出汁を軸に、バラエティ豊かなメニューで人気を集めている。さらに、照り焼きチキンやとんかつ、カレー、牛丼など、うどんにとどまらない幅広いラインナップも魅力だ。
その同店が、2026年5月のスペシャルとして打ち出すのが「アルミホイル包み 和風デミグラスハンバーグ」である。一見すると、うどん店とは結びつきにくいメニューだが、そこには和食料理人ならではの発想と技術が凝縮されている。
八丁味噌×デミグラス、和と洋の再構築
主役となるハンバーグは、上質なビーフとポークの合い挽きを用いた300グラムのボリューム。しっかりとした食感を保ちながら、驚くほどしっとりとした口当たりを併せ持つ。
その理由は、仕込みの段階にある。ある素材を加えることで(企業秘密!)、肉の繊維をやさしくほどき、旨みを内側に引き込むひと手間が施されている。一口で感じるやわらかさとジューシーさは、単なる配合ではなく、素材に向き合った丁寧な仕事の積み重ねによるものだと伝わってくる。
特筆すべきはソースである。ベースはデミグラスでありながら、八丁味噌を加えることで、単なる洋食の枠を超えた深みを実現している。甘みとコク、そして後味に残る穏やかな旨みが、全体の味わいを和の方向へと引き寄せる。ここに、和食料理人・関さんの感性が明確に表れている。

アルミホイルが引き出す、香りと体験
この一皿の魅力のひとつは、なんといってもアルミホイル包みだ。包み焼きにすることで、肉汁と香りをしっかりと閉じ込め、提供直前までアツアツのまま旨みをキープしてくれる。
客席でホイルを開いた瞬間、立ちのぼる湯気とともに広がる香り。そのライブ感は、単なる食事を「体験」へと昇華させる。あふれ出る肉汁と和風デミグラスソースが一体となり、まろやかでバランスの取れた味わいを完成させる構成も見事である。
箸で味わう、記憶を超える、和のハンバーグ
ハンバーグという洋食に、発酵の知見や下処理の技法といった和の要素を織り交ぜ、新たな和洋の一皿として昇華している点に強く惹かれた。
かつての記憶にある「あの味」を思い起こさせながらも、それを軽やかに超えてくる仕上がり。箸で味わうハンバーグという体験もまた新鮮だ。5月のスペシャルは、トロントにおける日本発の洋食の広がりを予感させる一皿といえるだろう。














