カナダでゲーム屋三昧#013
なぜ日本はグローバル化できないのか

@McGillミャンマー旅行

達するAPU大学
「カナダでゲーム屋三昧」、#12で1年間の振り返りをしたところ、私信でお便りを頂きました。同業者の方からの励ましの言葉でした。とても嬉しかったです。社会実験で「会社の中で誰が最も脳を活性化させているか」というものがあったのですが、その結果は予想に反して経営者・上司ではなく、実は部下でした。下がうまくガイドして、部下力をもって接してあげることで、実は上司は初めて上司らしくなれるわけです。作家/読者の場合はこうした上下があるわけではないのですが、作家を一番生かすのは編集者や批評家、そして読み手です。発信者/受信者の関係において、実は受信者が基準を決め、発信者の質・量をコントロールするのだというのが実験の結果です。何が言いたいかというと、、、コメントください(涙)。一人で書き続けるのは辛い…。
閑話休題。今回のテーマは「人のグローバル化」。せっかくカナダくんだりで開発しているので、今年はもっとグローバル化について深堀りしていきたいです。前回もちょっと触れましたが、実は世界のグローバル化というのは最近に始まった現象でもないですし、一方向的にどんどん進むというものでもありません。特に人に関しては、1860年から1914年、ここが歴史上もっともグローバル化が進んだ時代なのです。欧州の1割にあたる5000万人弱が米国大陸・オセアニア他に向けて移住し、日本人の南米・北米移民もかなりの数に上りました。
ところが、現代もそうですが、世界は常に革新的なものに対して保守的な動きがあり、従来の形を守ろうという動きが存在します。第一次体制を機に反グローバル化、移民がどんどん入ったことで雇用不安・賃金低下・社会制度の不安定化などによって、世界各国で移民排斥運動の風潮が出てきます。反ユダヤ主義が席巻したのものちょうどこのあたりですし、優生思想で民族の優劣なども議論されはじめ、世界恐慌とともに世界は急激に「閉じて」いきます。資本や投資、貿易のレベルで第一次大戦前の水準に達したのは、第二次大戦後の回復期を経てようやく1980年代になってから。そして人に関してだけは、実は2005年をもってなお、海外長期滞在者の割合は1900年当時には達していません。飛行機にどんどん人が乗って、方々に海外旅行するようになった現代をもってなお、100年前の人々のボーダーレスな移民の波にかなわないのは驚くべき事実です。
つまりグローバル化はまだ途上なのです。ここから10-20年という単位で継続的に進行し、また移民排斥などの斥力と戦いながら徐々に進むことでしょう。とした中で日本の位置づけというのはとても面白いです。そのドメスティックぶりについてはもはや周知の事実です。TOEFL平均70点はアジア31か国中26位、海外留学をしている学生の割合1%はOECD33か国中ワースト2位(東大生はなんと平均以下の0.6%)、新入社員の海外就業志向アンケートで、『海外赴任をしてみたいと思うか』の問いに『したくない』の割合が3割(01年)から5割(10年)とむしろ悪化傾向。個人的にはこうした傾向は過渡期の国では一般的ですし、大した話ではないと思ってます。
語学について言えば、本気になりさえすれば5年単位で大きく改善できます。国をあげて英語化を進めた韓国はTOEIC平均457点(95年)から633点(11年)と急激に伸ばし、15年で日本(541点(95年)から574点(11年))を大きく引き離しました。5000万人の人口も10年もすればこれだけ変わります。3000人単位の楽天で言えば、たかだか5年で(526点(10年)⇒794点(14年))十分話せるようになりました。
日本人のグローバル悲観論に関しては枚挙に暇がありませんが、そうした状態でありながら、事実、海外展開の波は恐ろしいほど急激にこの5年間で進みました。人がいないいないと言いながら、コンサルを使ってでも何してでも海外で市場をとろうとする企業は投資を惜しみません。多くの企業がグローバル人材育成のスキームを自社に取り入れ、育成にいそしんでいます。Mobile普及で急激に成長したゲーム業界の経験を背景にすれば、こうした状態はチャンス以外の何者でもありません。「人が育っていないのにグローバル化は着々と進行している」。成長のチャンスは必ずこうした不整合で起こりますし、こうした状態は5-10年もすると人が追い付いてきてチャンスは急激に閉じられます。この時流れに迷わず飛び込めるかどうかで、10年後の面白い仕事が保障される、と思いながら仕事しています。
それより注目したいのは、歴史にまつわる日本人の特殊なグローバル化の過程です。そもそも人口の99%を同一民族が占める国(厳密には違いますが)は、世界で日本、韓国、北朝鮮くらいしかありません。そうした中でも日本の面白いところは、「面従背腹」、受け入れているようで受け入れていない特殊な欧米化を強みとするところです。欧米の植民地化を免れた希少な国であると同時に、自らが植民地政策を行った、唯一の非欧米国、日本。「反欧米」になって然るべきであるにも関わらず、非常にアンビバレントな親欧米的感情を持ち合わせている。欧米人の割合が歴史上一度も0.1%を超えたことのない珍しい国でありながら、ある研究においては「CMで化粧品・日用品での白人俳優登場率が2割を越え、ダイレクトではない形で欧米人イメージとは接している」という状況。
日本人は自分たちのイメージをもとに取り入れ、自分たちのオリジナリティをアレンジして取り込む、ということが歴史的に上手な民族でした。遣唐使時代の中国文化であり、明治期の欧州文化であり、戦後の米国文化であり。米国のバービー人形は8頭身、日本のバービー人形は7.3頭身、日本人平均6.7頭身。欧米のものをそのまま取り込むのではなく、「(これだったら理解できる)憧れの欧米人」に咀嚼し、取り込みます。そういったことはゲーム開発から映画づくりから、人事制度やコーポレートガバナンスに至るまであらゆるところで同じ事例がみられます。物事に正解はなく、皆が正解と思えそうなものを作れれば目的は達成されます。欧米人が語るグローバル化をそのまま受け入れるからこそ、日本のグローバル化は進まないのだと思います。「(日本人にとっての)グローバル化」という主語に僕はとことんこだわっていきたいですし、このVancouverの経験をそこにつなげていきたいなと思ってます。2年目に入りましたが、「カナダでゲーム屋三昧」今後ともよろしくお願いします。
中山 淳雄
1980年宇都宮市生まれ。2004年東京大学西洋史学士、2006年東京大学社会学修士、2014年Mcgill大学MBA修了。(株)リクルートスタッフィング、(株)ディー・エヌ・エー、デロイトトーマツコンサルティング(株)を経て現在 はBandai Namco Studios Vancouer. Incに勤務。コンテンツの海外展開を専門に活動している。著書に『ボランティア社会の誕生』(三重大学出版:第四回日本修士論文賞受賞作、2007年)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書、2012年)、『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない? 』(PHPビジネス新書、2013年)、他寄稿論文・講演なども行っている。




