アフタヌーンティーと一緒にいかが?イギリスの伝統菓子|特集「ヨーロッパの伝統菓子」第二弾
紅茶や軽食とともに甘いものを楽しむアフタヌーンティーの習慣があるイギリスでは、スイーツの種類がとても充実している。その中にはロイヤルファミリーとの関わりが深いものも多く、まさにイギリスの歴史を映すイギリス菓子。軽いふんわりとしたものよりも重厚感のあるスイーツが好まれるだけあってその満足感のあるスイーツは、疲れたときのエネルギーチャージにもぴったり。
Daddy O Doughnuts and British Baked Goods
歴史に逆らえないほどの美味しさ
レーズン、カランツ(干しぶどう)、ブラウンシュガー、そしてスパイスを混ぜ合わせたフィリングが詰められたサクサクとしたパイ菓子。通常は、直径7センチほどだと言われているがこちらのお店のは寛大な大きさ。禁止されてもけして歴史から消えることのなかったその味、ぜひ一度味わってみたい。
丸いぷっくりとした形が特徴のイギリスではお馴染みのお菓子。このお菓子はマンチェスターからそう遠くないエクルズケーキ発祥の街の名前にちなんで名付けられた。エクルズには1111年創立の歴史ある教会があり、毎年、教会の創立を祝う礼拝の後には豪華な食べ物が振る舞われ、その中でもエクルズケーキは人気だったんだとか。しかし、1650年になると、清教徒革命で知られるオリバー・クロムウェルによって「異教徒のもの」として禁止される。だが、その後もエクルズケーキの美味しさにはあらがえず消えることなく今でも紅茶のお供として愛されている。
美味しすぎてジャミングするドーナツ♪
こちらのお店では、ホームメイドで作られるイチゴジャムと、レモンクリームの2種類からフィリングが選べる。これらのイングリッシュドーナツはレゲエの神様、ボブ・マーリーの名曲「Jamming」から、食べたら“ジャミング(楽しい時間を過ごせる)”と、ジャム入りのドーナツ“Jam in”をかけて「ボブマーリー」とユーモアたっぷりの名前が付けられている当店イチオシの一品。
形やスタイルは違えど世界中で愛されるドーナツは何世紀も前に古代ローマとギリシャで誕生した。揚げた生地を蜂蜜やフィッシュソースでコーティングして食べられていたものがアラブ人によって砂糖シロップでコーティングされ甘いドーナツとして食べられ始めた。これらのドーナツは、イングランドを始めとした北ヨーロッパに1400年頃に伝えられ、各地でバラエティ豊かなドーナツへと進化していき今では世界中で王道のスイーツとなった。英国ではカスタードクリーム系のドーナツが最近流行っているものの、フルーツのジャムドーナツが元祖なんだとか。
可愛い見た目で気分もあがる
ミニタルトにピンクのアイシング、上にちょこんと乗っかったさくらんぼがとても可愛いお菓子。こちらのお店ではBakewell Tartと呼ばれているが実際は、べイクウェルタルトの一種の「チェリーベイクウェル」と呼ばれるスイーツだそう。アーモンドスポンジのタルトにラズベリージャムがよく合う一品。
20世紀にジャムの層が土台となった卵とアーモンドペーストで作られるべイクウェルプディングから派生したお菓子。べイクウェルという町で誕生したお菓子だと言われている。
Castle and Coal
STPが冬の訪れのサイン
オープンしてからたった数年でトロントニアンの心を鷲掴みにしたCastle and CoalからSTP(スティッキートフィープディング)販売開始のニュースが入れば、それは冬が訪れるサイン。
秋冬限定で販売されるその甘いスイーツは、カップにひたひたに入ったトフィーソースが堪らない。トフィーソースをたっぷり吸ったふわふわなデーツケーキを頬ばればそこには天国が広がる。甘みと、塩気のコントラストを作ることをお店のモットーにしているだけあり、上にまぶされた粗めの塩がまた良いキックになっている。完全に危ないデザート。その甘さも寒さの中で縮まった身体を癒す。
デーツを使った蒸しケーキにトフィーソースがかかったイギリスの甘いお菓子。文字通りスティッキー(ねっとり)していて、温めて食べられるのが特徴。イギリスではパブの定番のデザートなんだとか。
クイーンエリザベスにサーブしたシェフから習った本場の味「カスタードタルト」
ロンドンで習得した本場のヨーロピアンペーストリーを提供しているこちらのお店。ロンドンのレストランで働いていたときは、クイーンエリザベスの80歳のお誕生日にこのカスタードタルトをサーブしたシェフと一緒に働いていたという当店のシェフ。そこで学んだカスタードタルトのレシピは合計5時間かけて丁寧に焼き上げられる。一切「す」の入っていないシルキーなカスタードに、新鮮なナツメグの香りが贅沢な一品。
イギリスではイースターが近くなるとお店などでよく見られるようになるカスタードタルト。タルト生地に卵と牛乳で作られるカスタードを流して焼き、仕上げにフレッシュなナツメグをおろして完成。クイーンエリザベスがこのカスタードタルトをこよなく愛していることが有名で、自身の誕生日パーティのケーキにも指定されたことがあるほど。
Blackbird Baking.Co
小さくカットされた甘いジンジャーがアクセントのスコーン
ダウンタウンに2店舗を構えるBlackbird Baking Co.は、2021年に10周年を迎えた地元の人や訪れる観光客まで多くのお客に愛されるベーカリーだ。メープルジンジャースコーンは、ジンジャーの香りが食欲をそそる、スコーンにしてはしっとりの生地。甘く炊かれたコロコロサイズのジンジャーが絶妙なアクセントになっている。表面のシュガーもザクザク食感を演出していてクセになる味だ。
Baker and Scone
外サクサク中しっとりなスコーン
白を基調としたヨーロピアン調の店内がとても可愛いこちらのお店。店名にもある通り、本格的なスコーンが評判のお店。ボリューミーでスコーン特有の外側のゴツゴツさが完璧。フレーキーで、サクサクなスコーンを半分に割ると中はしっとりとした厚みのある生地。おかず系からデザート系まで展開されるフレーバーは、おやつとしてもご飯としても食べられる。すでにバターがふんだんに使われたリッチなフレーバーに追いバターで贅沢な気分を味わってみては?
アフタヌーンティーなどにも必ずついてくるイギリス定番のお菓子、スコーン。本場イギリスでは「クリームティ(Cream Tea)」と言うと、ジャムと、クリームを添えたスコーンと紅茶のセットが出てくるのだそう。スコーンの元となるお菓子は1000年頃にヨーロッパ北部のスコットランドで誕生したと言われるバノック(Bannock)という平たいパン。時は経ち、ベーキングパウダーの誕生や、レシピに砂糖を加えるなどして現在のスコーンの形になったんだとか。
スコーンは1500年代初頭にスコットランドで生まれたと言われている。現在は小麦粉を主原料に、オーブンで作られているスコーンだが、昔は、オーツ麦を主原料とし、鉄板で焼かれていたのだとか。1700年代、女王の友人であるアンナ夫人が、ある日の午後遅く、使用人にお茶と甘いパンを作るよう命じた。当時スコーンは巷で人気が出ていたため、提供されたところ、彼女はとても気に入り、毎日午後にこのスコーンを頼むようになったという。この習慣はイギリスの伝統となり、現在の「アフタヌーンティータイム」(午後4時)として引き継がれている。
Daddy O Doughnuts & British Baked Goods
小さめのケーキで数種類のフレーバーを楽しめる
ポップな看板、カラフルな店内がなんとも可愛らしい雰囲気のDaddy O Doughnuts。名前にもある通り、ビーガンドーナツを含むそのバラエティ豊かなドーナツで人気だが、イギリスの伝統菓子も徐々にメニューに足しているんだとか。ミックス粉などは一切使わず、全て一から作られるナチュラルな焼き菓子。その中でも、一人サイズに作られたヴィクトリアサンドウィッチは、ストロベリージャムとバニラバタークリームが挟まれたオリジナルに、バースデーケーキ、ロータスビスコフフレーバーがある。友達と味違いで頼んでシェアしてみてもいいかも。
バターとバニラの風味が漂うスポンジケーキにジャムと生クリームを挟んで作られるイギリスのクラッシックなケーキ。スポンジケーキはイーストされていない最初のケーキだと言われている。英国で証明された最も初期のスポンジケーキといえば、1615年に英国の詩人Gervase Markhamによって書かれた本で登場する。それでも今日見られるスポンジケーキとはかけ離れていてクラッカーのようにサクサクしていたものだった。スポンジケーキが現在のような形になったのは、18世紀半ばにパン職人が溶き卵を使用し始めたこと、英国の食品メーカーによって発明されたベーキングパウダーの出現によって食感の向上に繋がった。
インスタ映えもばっちりな可愛いケーキ
パステルカラーがモチーフになっているお店の雰囲気ともばっちり合うなんとも洋風で可愛い見た目のお菓子。 白色のマジパンで覆われた細長いケーキを切ると断面には交互にピンクと黄色の独特なチェック模様が現れる。別々に焼き上げられる2色のケーキのピースを組み合わせるときにのりとして使われるのがアプリコットジャム。ベーキングへの愛が溢れるシェフが作るこの素敵なケーキをぜひ堪能してほしい。
このケーキは、もともとビクトリア女王の孫娘のビクトリア王女とルイス・アレグザンダー・マウントバッテン王子の結婚式の贈り物として作られた。敬意を払うためルイス王子の姓をケーキの名前にしたのだとか。
Duo Pâtisserie
マーカムにあるDuo Patisserieはお菓子パンであるヴィエノワズリー、ケーキ、チョコレートを専門とする日本のエッセンスが入ったカフェである。こちらのパティスリーで作られるフレームキャラメルプリンは、上にホイップが乗った甘さが上品なプリン。ビロードのように滑らかで、おいしいクリーミーなバニラカスタードがたっぷり。
世界中で作られるプリンは16世紀にイギリスの航海者が生み出した、という説がある。家庭でも簡単に作ることができるプリンだからこそ、レシピの数は数多あり、トロトロ食感のプリンから、ずっしり重めのプリンなど、バリエーションは様々。
GARDINERS
1960年代にスコットランドで創業されたGARDINERSのファッジは、スタンダードなプレーン味に加え、ストロベリーフレーバーやジンジャー、チョコレートフレーバーや、お酒の入った大人なファッジなど様々なファッジが販売されている。味はもちろんのこと、その缶の可愛さに惹かれること間違いなし!手土産にも喜ばれる一品だ。写真は左がベイリーズオリジナルアイリッシュクリームリキュールのベイリーズラグジュアリーファッジティン、中央がスコットランドバニラファッジ、右がストロベリーアンドクリームファッジ。HOME SENSEやWINNERSで購入可能。
西洋キャンディの一種で、何より甘さが特徴。キャラメルよりもしっとりとした食感でひと口噛めばとろけるように柔らかい。イギリス発祥だが、のちにアメリカやカナダへ広まったと言われている。
Walkers-Nonsuch
Walkers Nonsuchはイギリスで最も歴史のあるトフィー専門店だ。写真はEnglish Creamy Tofeeで、名前の通りキャラメルに近いねっとりな食感とクリーミーな味わいがたまらない。ナッツ入りやコーヒーフレーバーなど、様々な種類のトフィーが販売されており、手軽にスーパーなどで手に入れることができる。
砂糖や蜂蜜をバターと混ぜてキャラメル化させたお菓子。小麦粉を混ぜて作られることもある。低温でじっくりと焼き上げられ、歯ごたえのある仕上がりのトフィーもあれば、カリッとした食感のトフィーもある。イギリスだけでなくアメリカでも作られており、各国によって少しずつテイストが違うため、食べ比べてみるのも面白い!
Walkers
ショートブレッドクッキーといえばWalkersを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。バターの芳醇な香りとさっくりほろりの食感はショートブレッドならでは!大手スーパーやドラッグストアで気軽に購入できるのも嬉しい。紅茶はもちろんのこと、ビターなコーヒーとの相性も◎。ティータイムにもぜひ召し上がれ!
ショートブレッドの起源はなんと12世紀のスコットランド。当初は“ビスケットパン”から始まり、バターが使われるようになり、ショートブレッドへ発展したと言われている。中世ではショートブレッドは高価な贅沢品とされ、結婚式やクリスマス、新年などの特別な機会にしか食べることはできなかった。スコットランドでは、今でも伝統的に新年に食べるそうだ。