老若男女に愛されるポルトガルのお菓子|特集「ヨーロッパの伝統菓子」第一弾
「金平糖」や「カステラ」など日本でもお馴染みなスイーツの発祥の国ポルトガル。 美しい伝統から生まれたスイーツは老若男女に愛され、どこか懐かしい味がするものが多い。そんな魅力たっぷりのポルトガルスイーツをトロントで味わえるお店をマルっと紹介!
Doce Minho Pastry And Bakery
エッグタルトファンをうならせるエッグタルト
可愛い蜂のマークと赤、緑、黄色のストアサインが目をはるダッファリン×エグリントンの南にあるポルトガルベーカリー。近所の住民でいつも溢れかえっているこちらのベーカリーはすべてポルトガルから直輸入で仕入れている。ビーンズ缶、クラッカー、キャンディからポルトガルの雑誌までも売られている。そんな当店の人気商品はやはり「エッグタルト」。トロント中のエッグタルトを食べてきたと豪語する人も、「ここのは常に焼きたてで、生地はパリッパリ、モチモチで、カスタードクリームとの比率も最高」とうなる。お近くまで行かれた際は、ぜひ至高のエッグタルトを試してみては?
ポルトガルのお菓子といえば、パリパリの生地にとろっとろのカスタードクリームがたまらないエッグタルト。その歴史は300年以上前に遡る。首都、リスボンの西部は世界遺産が集中する歴史ある場所、ベレン地区のジェローニモス修道院が舞台。今でさえ、主要な観光スポットになっているものの、当時は行政教区であった。洗剤がなかったため、修道女や、僧侶は、衣服を洗うためにたくさんの卵白を使用したそう。そこで、出るのが多量の卵黄。破棄するのにはもったいないということで卵黄をたっぷり使用した至極のカスタードクリームを作り上げ、修道院を支援するための収入を生み出す手段として売り出されたのが始まりなんだとか。
Venezia Bakery
ポルトガルからの絵はがき
白と濃い青を基調としたとても素敵な店内には、たくさんのポルトガルお菓子が並ぶ。1979年にオープンして以来、オージントンの変化を目の前に、変わらない伝統のポルトガルお菓子を焼き続けてきた。そんな当店のエッグタルトは焼き目が香ばしくサクサクな生地と甘さ控えめのカスタードクリームが売り。オーナーのカエターノさんは、このエッグタルトを「ポルトガルからの絵はがき」と呼んでいる。フレーバーも何種類かありココナッツがちりばめられたヌテラエッグタルトをチョイス。1口頬ばれば、ヌテラのナッティさとカスタードクリームの滑らかさのコンボが贅沢すぎる逸品。カロリーを気にせず何個も食べていたい味。
外カリカリ、中ぷるぷるなフレンチトースト
「ポルトガル伝統のオススメペーストリーは何ですか?」と聞いて、教えてくれたのがこのポルトガル風フレンチトースト。サイズは大きいが紙袋にいれて片手で食べ歩き出来るのが良い。外側には、シナモンシュガーがまぶされていて、通常のフレンチトーストよりもクランチーで、シナモンの香りが美味しい。ひと口食べれば、中のたっぷり液が含まれたぷるぷるさに驚く。ポルトガルのお菓子はその甘さでも有名だが、こちらのフレンチトーストは甘すぎずかなり食べやすい。
パンを卵液に浸して焼き上げる日本でもお馴染みのフレンチトースト。実は、ポルトガルにもフレンチトーストと似てるけど作り方も味も少し異なる逸品があった。ラバナダーシュと呼ばれるこのデザートは、カトリックの背景があるようで、四旬斎 (レント)の間は、ポルトガルのカトリック教徒は肉の代わりにパンを食べたので、古くなって硬くなったパンを美味しく食べるためにこのデザートが作られたそう。そのため、ポルトガル人はラバナダーシュといえば、クリスマスを彷彿とさせるのだとか。
Tasty Bun Bakery
素朴なふかふかほんのり甘いパン Massa Sovada
ポルトガルの本場の味が楽しめるこちらのベーカリーでは、この黄金色に輝く、ほのかに甘いMassa Sovadaが人気なんだとか。手のひらよりも大きいこのふかふかのパンにかぶりつけばどこか懐かしい、素朴な甘みが口に広がる。とても軽いのでそのままでもペロリと食べられてしまいそう。紅茶やコーヒーもいいがミルクとも合いそうな気がする。「甘みと塩気を一緒に食べるのがポルトガル人は大好きなのよ」と、オーナーが言っていたがチーズとハムを挟んだらこれまた最高そう。
なんともシンプルな見た目だが、どこのポルトガルベーカリーに行っても必ず置いているこちらのパン。牛乳、砂糖、卵、イーストのみで作られるこのパンは、バターやジャムを塗って紅茶や、コーヒーとともに、またはしょっぱいものを挟んでサンドウィッチのようにして食べられるそう。もともとは、イースターやクリスマスの祝いの際に食べられていたんだとか。
Nova Era Bakery
ココナッツ好きにはたまらないココナッツケーキ
ポルトガル人が多く住むエリアで、1991年にオープンしたNova Era Bakery。本格的なポルトガルペーストリーからヨーロピアンデザートまで幅広く扱っており、いまではオンタリオ州に数店舗オープンするまでの大人気店となった。どれだけ拡大しても、ナチュラルな食材を使うこと、伝統のレシピ、メソッドを使用することは妥協しない。そんな当店のガラスケースで、一際目立つさくらんぼのせココナッツケーキ。この可愛い見た目もそうだが、ふんだんに使われたココナッツと卵から作られる独特なモチモチした食感がココナッツ好きの人にはたまらない。
卵、砂糖、レモンの皮とたくさんのココナッツを用いて作られるポルトガルのココナッツケーキ。甘く煮つめたさくらんぼが上に乗っていることが多い。ポルトガル以外でも、ラテン系の国で愛されており、家庭の食卓によく並ぶデザートでもあるという。
Golden Wheat Bakery Shop
甘党にはもってこいの至福のおやつBora de Berlim
トロントで10年以上にわたって毎日パンや、ヨーロピアンデザートを焼き上げてきた家族経営のベーカリー。本格的なポルトガル、イタリア菓子や、手頃な価格とフレンドリーなサービスで人気。こちらのベルリンボールは、エアリーなパンにポルトガル特有の黄身の甘いクリームが溢れんばかりに挟まれ、砂糖がまぶせられた甘党にとっては天国のよう。それでも生地が軽いからかペロッと食べられてしまうのが怖いところ。カロリーのことなんて忘れてガブッとかぶりつきたいドーナツ。
ボリューミーなポルトガルドーナツ、ベルリンボール。その名の由来は、第二次世界大戦中にドイツから避難してきたユダヤ系移民が生活費を稼ぐためにベーカリーでドイツ系のスイーツを販売し始め、その中の一つだという。片手でつかめて食べ歩きしやすいようにまん丸い形につくられ、ストリートフードとして定着したのち、現在ではビーチでよく売られているんだとか。
Bom dia Café & Bakery
シンプルな材料から作られる史上最強のデザート
ポルトガル語で「Good Morning」という意味をもつ店名にふさわしく、高い天井に吹き抜けのロフトが気持ちいい朝を思い出させる店内。ポルトガル伝統のデザートから、サンドウィッチ、厳選された豆から作られるコーヒーを提供することで、トロントニアンの朝を笑顔でスタートさせることをモットーにしているという。そんなお店で作られるタルトはさまざまな種類がある中でミルクタルトが一番人気なんだとか。エッグタルトよりも少し大きめで、どっしりしたミルクタルトは、食べ応え抜群。もちっとした食感で、カラメライズされた外側は香ばしく、卵と牛乳の美味しさを濃縮したようなデザートだ。
ポルトガルのタルトといえば「エッグタルト」が1番に思い出されると思うが、エッグタルトと同じくらい愛されているのがミルクタルト。ポルトガルでは、家族の集まりがある度に、ミルクタルトを囲むのだとか。首都・リスボンに隣接するシントラで生まれたそのデザートは、13世紀に家賃としてミルクタルトを送るものがいてそれを政府も受け取っていたというから、どれだけこのミルクタルトが人々を魅了する味なのかがおわかりになるだろう。
濃厚さに感動したライスプディン
焼きたて、作りたてのデザートが売りのBom dia Café & Bakery。冷蔵棚に、ジュース、サンドウィッチ、ムース、ティラミスと並ぶのは、ポルトガル伝統のライスプディン。ライスプディンはシナモンで網目状に飾りつけされ、カスタード色をしていた。スプーンを入れるともったりとした重めの感触が伝わる。ひと口食べれば、その濃厚さに驚いた。お米は形がちゃんと残っていてプチプチしているものの、卵と牛乳で作られるクリームがとても滑らか。底の方には、レモンの皮が入っていて、後味爽やかの計算がし尽くされたデザートだった。
ライスプディンといえば、アフリカ、アジア、中東、欧米など、世界どこでもみられるがポルトガルのライスプディンは、濃くて、もったりしていてミルキーなのが特徴。また、最後にはシナモンパウダーで綺麗な模様で飾りつける。
Brazil Bakery & Pastry
カリカリ部分が美味しくあっさり食べやすいマフィン
40年以上にわたりポルトガル伝統のペーストリーをトロントで作り上げてきたこちらのベーカリー。ショーケースには、たくさんのポルトガル菓子が並ぶ。その中でも、このサイズは小さいが高さがあるマフィンの形がなんとも愛らしいく目を引いた。米粉を使用しているので、しっとりしていながらもほんのりレモンの風味があっさりペロッと何個も食べられてしまいそうなマフィン。上の部分は、割れ目が入り少し焦げ目がついてカリカリ、また砂糖のシャリシャリ食感が楽しい。
英語では「Rice cake」と呼ばれることもあるが日本のお餅のようなものではなく、小麦粉と米粉を使ったポルトガルのマフィン。ポルトガルは、ヨーロッパの中でも、最もお米の消費量が高い国で、料理やデザートにも使われることが多いんだとか。お米大好き、米粉も甘味に使う日本人としては親近感が湧く。同国を含んだラテン系の国でもよく食べられ、カナダのポルトガルベーカリーでも置かれている定番の焼き菓子。
Caldense Bakery
酸味と甘みのコントラストに圧巻 Mousse de Maracuja
1968年にオープンして以来、エッグタルトを始めとしたポルトガル菓子を中心にヨーロピアンデザートを提供してきたCaldense Bakery。ペーストリーとは別の棚で冷えているのは、鮮やかなオレンジ色が目を引くパッションフルーツムース。かなり寛大なサイズで手のひらほどあるカップにたっぷりムースが入った上にパッションフルーツ果汁と種を使ったジュレのようなものがかけられている。コンデンスミルクが入っていることもあり、ムースというよりもアイスクリームのような重みのあるデザート。パッションフルーツの味がちゃんと濃く、酸味もある中、甘みがいいバランスを取っている。これは、リピートしてしまうデザートだ。
ポルトガルを含んだラテン系の国ではよく食べられるというパッションフルーツを使ったムース。起源は面白く、コーヒーメーカーとしても有名なNestelのブラジル支社は、売上が落ちていたコンデンスミルクを料理学校と協力して宣伝を始めた。その作戦は、見事大当たりでその後のデザートにも影響を及ぼすこととなった。その結果が、ヨーロッパ諸国から伝わってきた。
ムースにコンデンスミルクを使用することでムースの食感が重くなり、調理時間も短縮されたことでコンデンスミルク入りのムースが広がっていくと共にパッションフルーツムースも登場してくることとなった。
3時のおやつはススピーロと紅茶で…
手のひらサイズにもなるどでかいススピーロがころころっとショーケース内に並べられている姿がもうすでに可愛らしい。ひと口かじればふわふわ、サクサク、シュワシュワ。懐かしいまろやかな甘みを感じている隙に、すぅーと消えてしまう。舌に何も残らないのが本格的なススピーロだと言われているそうだが、これはまさに本格的な良いススピーロだろう。少しずつかじって紅茶と楽しみたい逸品だ。
ススピーロとは、ポルトガル語で「ため息」という意味で、その名の通り口の中でふわっと一瞬で溶けてしまうメレンゲを焼いたお菓子。40日間、祈りと、断食を捧げる四旬斎(レント)の後に食べられる優しい甘みのススピーロが人々の心を癒すという。