賃貸契約の更新、解約、賃料アップについて|商工マーケット動向そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第88回】
今回は、賃貸契約の更新と解約、賃料アップについてお話したいと思います。
賃貸契約期間について
オーナー(貸主)とテナント(借主)が書面へのサインをもって合意すれば、賃貸契約期間は1週間でも1か月でも1年でも構いません。例えばオーナーが自己所有しているシェアハウスを直接誰かに貸し出す場合、3か月や6か月などで契約を結ぶことも多いです。契約開始後のトラブル発生を避けるため、オーナーとテナントが直接賃貸契約を結ぶ際には、Ontario Residential Tenancy Agreementと呼ばれるオンタリオ州所が所定する賃貸契約書必ず使用するようご留意ください。
オーナーから依頼を受けたエージェントが賃貸募集を行う場合、オーナーはオーナーエージェント(及びテナントエージェント)に対して合計1か月分の賃料+HSTの金額を仲介手数料として支払います。そのため、賃貸契約期間は最低でも1年間であることがほとんどです。もしテナントが当初から1年ではなく、2年や3年の契約期間を希望する場合、オーナーが同意すればそうした長期の固定期間による賃貸契約も可能です。
賃貸契約の更新について
契約の更新方法は、新たな1年間(あるいは双方合意した固定期間)による更新とマンスリーによる更新と2種類あります。
❶ 新たな固定期間(1年間等)による更新
1年間等新たな固定期間によって契約を更新する場合、メリットは当該期間中においてはオーナーが物件を売却したりその他どんな理由があっても追い出されることはありません。一方、リスクは期間中に人事異動などにより引っ越しの必要が発生した場合でも途中解約ができませんため、残存期間に対して賃料の支払いをオーナーから求められる点です。固定期間中に人事異動になる可能性がある場合には、60日前通知でペナルティなしで途中解約できる早期解約条項(Early Termination Clause)を契約当初あるいは更新の際に加筆することをおすすめします。また固定期間による契約更新の場合、双方サインの入った書面の取り交わしが必要です。
❷ マンスリーによる更新
オンタリオ州の規定(Residential Tenancy Act)では、現在の賃貸契約期間が終わるまでにオーナーおよびテナント(入居者)双方ともに解約通知を行わない場合、当該契約は自動的にマンスリー契約に切り替わります。日本とは異なり、初年度の賃貸契約期間の終了と同時に契約も終了となるのではない点についてご留意ください。
マンスリーで契約を更新する場合、メリットは60日前通知によっていつでも退去が可能です。一方、リスクはオーナー又はその家族が当該物件に住む場合、もしくは売却後に新オーナー又はその家族が住む場合、居住できない規模の改装を行う場合などにおいては、60日前通知により退去を求められる可能性があります。
オーナーがテナントに対して退去を求める場合、正式な書面(N12等)にて通知した後、1ヶ月分の賃料を支払うか、もしくはテナントが承諾する別の住居を用意する必要があります。また、オーナーの要請によりテナントが退去する場合には書面に定められた解約日以前であっても、オーナーへ書面により10日前に通知すれば早めに解約することができます。
「オーナーから売るから出てってくれ、と言われました」というご相談を時々受けますが、オーナーからの要求は、テナントにとって退去しなければならない理由にはなりません。一般的に空室の方が物件は売却しやすいため、オーナーもテナントに対してまず言ってみよう、という気持ちが多いです。その時は「売るのはご自由に。新オーナーが住む場合にはN12を送って下さい」と伝えてください。
賃貸契約の解除について
1か月以上の固定期間による賃貸契約を解除したい場合、オーナー側へ60日以上前に書面で通知する必要があります。メールも書面の一つですのでオーナーからの同意の返信があれば証拠となり有効ですが、正式な解約通知書を送るのが最も確実で安心といえます。テナントからオーナーへ解約希望を知らせる場合、解約通知書は2種類あります。
❶ N9による解約
固定期間の満期日をもって解約する場合、あるいはマンスリー契約を解約する場合、N9と呼ばれる解約通知書を使用します。解約における最終日は自分の賃貸契約の月サイクルの最終日となります。例えば、契約が1日始まりの契約の場合には月末日、15日始まりの契約の場合には14日が最終日となります。N9にはテナント(借主)からの一方的な解約通知となり、オーナーの承諾のサインは不要です。
❷ N11による解約
固定期間の賃貸契約を途中解約する場合、あるいは月サイクルの途中日で解約する場合、N11という解約通知書を使用します。N11はテナントおよびオーナーの双方のサインを必要となります。最終日よりも前に退去した場合、1週間や2週間等解約日と退去日の差が生じた期間に対してオーナーが賃料を返還してくれるケースは少ないですが、交渉してみることは出来るかと思います。途中解約の場合、60日以上前のできるかぎり早めにオーナーに希望を伝え同意を得た上で、N11に双方サインをすることをおすすめします。早期解約をする必要があるけれど契約書に定めがない場合、60日前通知の2か月間+ペナルティ1~2か月程度でよいか、など早めにオーナーと交渉しましょう。
解約通知を行った場合、オンタリオ州では退去前60日間においてテナントは内見に協力をしなければならない、というルールがあります。通常、オーナーエージェントの不動産会社より24時間前に内見依頼について通知が来ますので、これに対してOKかどうか承諾の返事をします。もし在宅勤務や引っ越しなどの事情により指定された日時にはどうしても内見に来てほしくない場合には、拒否することも可能です(毎回拒否することはできません)。24時間以上前の通知を守ってくれない場合や急な内見通知が続いて迷惑な場合、オーナーエージェント側にきちんとクレームを言いましょう。オーナーエージェントが改善してくれない場合には、オーナーに直接クレームを言った方が効果的です。
賃貸アップについて
オーナーは初年度の契約開始から1年が経った後、あるいは前回の賃料更新から1年が経った後は賃料をアップできる権利があります。契約更新のタイミングと賃料アップのタイミングは必ずしも一致するとは限りません。
オーナーが賃料をアップしたい場合には、90日以上前にN1と呼ばれる通知書あるいはメールやテキスト等の書面にて新たな賃料についてテナントへて通知する必要があります。またオンタリオ州のガイドラインによってレントコントロール(賃料上限率)を受ける対象物件の場合、オーナーは基本的には毎年オンタリオ州が発表する賃料上限率に基づいた金額のみ要求することができます。2024年、2025年ともに賃料上限率は2.5%でした。但し、2018年11月以降に完成した物件はオンタリオ州のレントコントロール(賃料アップ上限率)の規制を受けないため、オーナーの自由意志によって賃料を上げる権利があります。
前述した例えば3年間で賃貸契約を結ぶ場合、3年間賃料据え置きでいいと言ってくれるオーナーは少なく、「3年は構わないが賃料は毎年アップします」と言われるケースが多いです。そのため、もし長期で賃貸契約を結ぼうとしている物件がレントコントロール対象外物件である場合、例えば当初2年間は賃料を固定したり、2年目の賃料を契約時に取り決めるなど、予めオーナーに相談するのもおすすめです。
更新時の賃料の支払い方法
更新時における賃料の支払いについてご留意いただきたいのは、初年度の契約時に支払ったデポジットはオーナーが常に最終月の賃料(Last Month Deposit)として1ヶ月分の賃料を保有する権利があります。
そのため、更新の際には、初年度の最後の月から改めて1年分の日付指定の小切手にて支払うか、最後の月が始まる前に当該月分の賃料をお支払いください(例:初年度契約が2025年1月1日~2025年12月31日の場合、2025年12月~2026年11月までの12ヶ月分の小切手を用意)。
マンスリー契約であっても、毎月の賃料支払の手間を省くために1年分の日付指定小切手をオーナーに渡すことができます。もし途中解約した場合、退去日以降の日付指定された小切手は退去時にオーナーより返却されます。
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