金継ぎの魅力|お茶コラム
9月の異名は「長月」。夜が長いことから「夜長月」と呼ばれ、それが略されて、長月になったようです。秋の夜長、新しく習い事をされるかたもいるのではないでしょうか。今月はお隣のコラム、「金継ぎ開拓民のお茶休憩」を連載しているShuichiさんを通して知った「金継ぎの魅力」にふれようと思います。
私は陶芸作品が大好きなのですが、中でも抹茶茶碗へ対する魅力は高く、ちょうどいいサイズ、ちょうどいい釉薬、ちょうどいい手触り…つい手にとってしまい、ついつい家に連れて帰ってきてしまいます。やはり道具との出会いも一期一会。惚れ込んで購入するものばかりなので、ひとつひとつに思い出とストーリーがあります。
写真の抹茶茶碗は、私が桃ティーを始めた頃に友人であり、陶芸家でもあるSecretTeatimeのオーナーから購入したものでした。色合いもサイズも好きなのですが、これは注ぎ口があるタイプで、イベントで抹茶を注いで回る際に大変便利で、どこへ出張するにもお供をしてくれた抹茶茶碗でした。それがある日、誤って上から物を落としてしまい、ヒビが入ってしまったのです。あまりのショックにしばらくは落ち込んでいました。また、思い出がたくさん詰まった抹茶茶碗だったので、捨てるに忍びなく、いつか金継ぎを。と、とっておくことにしたのです。とはいえ、ここはカナダ。金継ぎレッスンとは無縁の場所だと思っていたので、棚で数年寝かせていました。
そんな折、パンデミック最中にインスタグラムの投稿を通して、トロントで金継ぎの普及活動をしているKintsugicaのShuichiさんに出会ったのでした。思い立ったが吉日、早速問い合わせをしました。当初は自ら修復したいと思い、金継ぎレッスンを受けるつもりでいたのですが、修復作業のプロセスを伺っていくうちに、大雑把な自分には難しいと悟り、習うことを諦め、修復依頼をしたのでした。修復後、「新たな作品」となって戻ってきた日のことを今でも覚えています。落ち着いた紫グレーの釉薬が金箔をひきたて、より魅力的な抹茶茶碗になって私の元に戻ってきました。もちろんヒビは意図的につけられたものではないのですが、稲妻のようなその模様が美しく、金継ぎによって新たな命を吹き込まれたようでした。
壊れたら捨てるのではなく、修復し、アップグレードさえしてくれる金継ぎ。日本が誇る伝統技術を身をもって体験したと同時に、ここトロントでもその技術を伝えてくれる金継ぎ師がいることに感謝しました。興味のある方はお隣のコラムをチェックし、是非問い合わせてみて下さい。

吉田桃代
Tea&Herbal Association Canada公認ティーソムリエ日本茶アドバイザー
日本茶のオンラインストア「Momo Tea」とお茶団体「Nihoncha Canada」を運営。Momo Teaは2015年からトロントのお茶の祭典、Tea Festivalや、日系文化会館の季節のイベントを中心に出店。2023から日本茶の良さをカナダの人に広めたいという想いを込めて、日本茶と日本の文化に特化した「日本茶祭り」を主催。毎年11月第一日曜開催予定。






