年の瀬|お茶コラム

この時期、「年の瀬」ですね、、と耳にすることが多くなるこの表現方法、調べてみると、江戸時代頃から使われた比較的新しい言葉のようです。瀬は川の流れが急なところ。淵は流れが穏やかなところをいい、時の経過を川の流れに例えています。
古今集の歌 「世の中はなにか常なる飛鳥川 昨日の淵ぞ 今日は瀬となる」
現代語訳 この世の中では、一体何が普遍であるのだろうか、いやない、飛鳥川において、昨日は淵であったところが今日は瀬にかわっているように。
年末は様々な行事が重なり、あっという間に時が流れてしまいますよね。「年の瀬」という言葉は、年末に向けてときが速く過ぎていく実感を表現しているのです。確かにこの時期、仕事では年度納め、忘年会などの集まり、またカナダでは多くの方がクリスマス休暇にあわせて、家族との集いが増えて忙しくなります。現代を生きている私たちと、江戸時代の日本人と同じ心境というところが、面白いですよね。
個人的には、忙しいときこそ、「お茶でも一服」を心がけています。私は玉露を飲むのが好きなのですが、その理由のひとつに、玉露をいれるときは、マインドを集中させたいため、他のことを一旦中断し、お茶をいれることに集中するからです。とはいっても大げさなことではなく、さ!いれよう。となった際は、お気に入りの茶器をいそいそと取り出し、どの湯のみに注ごうかと、うきうきしながら選び、適量の茶葉へそうっとお湯をそそぎます。私自身は、何をするにもけっこう雑で忙しない性格なのですが、玉露をいれる時だけは、丁寧に対応します。じっくり待っている時間、いつも思うのです。「贅沢なひと時だなぁ…」と。お茶がはいるのをただただ待つ時間。いいですよ。忙しくしている人こそ、おすすめです。
また、忙しい年末だからこそ、一呼吸おいて、この一年を振り返ってみるのもいいかもしれません。
禅語の世界を覗いてみると、「今に感謝すること」に気付かされます。「知足」という言葉がしっくりきます。年末年始を目前に、ついつい肩に力がはいってしまいそうな、年始の豊富だったり、今年できなかったことの後悔の念だったり、が脳裏をよぎると思いますが、年末年始だからこそ、一旦立ち止まり、自分の足元をみて、今の自分を受け入れます。知らず知らずに気負っていたものから開放されるような気がします。
このコラムをゆるっと読んでいただき、お茶でもいれてゆっくりしよう。と思ってもらえたら嬉しく思います。
こうして、このお茶コラムを通して皆さんへメッセージを送らせていただいていることに感謝し、今年最後のコラムを締めくくろうと思います。良いお年を。

吉田桃代
Tea&Herbal Association Canada公認ティーソムリエ日本茶アドバイザー
日本茶のオンラインストア「Momo Tea」とお茶団体「Nihoncha Canada」を運営。Momo Teaは2015年からトロントのお茶の祭典、Tea Festivalや、日系文化会館の季節のイベントを中心に出店。2023から日本茶の良さをカナダの人に広めたいという想いを込めて、日本茶と日本の文化に特化した「日本茶祭り」を主催。毎年11月第一日曜開催予定。




