政治はリーダーシップを発揮して、企業の存続を優先できる政策を!|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第94回】
東日本大震災から9年が過ぎて10年目の節目の年に入りました。しかし、今、世界は新型コロナウイルスの被害で、世界全体が被災している状況です。日本以上に、カナダの皆さんは、厳しい規制をされて、自由を奪われ、つらい日々を過ごしていると思います。いつ終わるのか、未来の見えない、戦う相手もウイルスということで目に見えない、まさに見えない敵と世界は戦っています。
日本は法律で行動制限を厳しくすることが出来ないようで、カナダをはじめとする世界の国々のように、強制的に全ての活動を止めることが出来ないようです。政府による非常事態宣言も出せるように法改正されましたが、これも強烈な罰則や制限をかける事ではなく、あくまで「お願い」から「要請」に変わるだけのようです。
海外の方々からは、日本はそんな悠長な対策をしていて大丈夫なのか、というお話をいただきますが、どうにも法律の関係があるので、何とも出来ないみたいです。しかし、「自粛のお願い」というあくまで「お願い」であっても、首相や東京都知事などがすると、それは100%ではなくとも、半分近い方々が従うのが日本人です。
そのような行動性自体は素晴らしいことだと思いますが、この「自粛のお願い」はあくまで「お願い」であり、お願いした首相や首長は通常ならばセットで出す、損失補てんや人の雇用維持のための助成など一切ありません。つまり、お願いだけして責任は無いのです。
外国の場合、強烈な行動制限をする代わりに、それで失う経済的損失をある程度カバーする助成も同時に出すことで、バランスをとっているのだと思います。今の「お願い」を重ねるだけでは、経済はどんどん失速して、そのあおりを受けるのは現場の経営者です。酒蔵も、飲食店さんにお客さんが行かなければ、お酒の販売数量も落ちます。自粛で飲む雰囲気にならないのは当たり前で、家で飲む方も激減しています。
また、日本でもはじめて非常事態宣言が出れば、日本人はちゃんと従って行動をすると思いますので、巣篭りのための買いだめなどが起きます。その際に米よりも先に酒を買うとは思えません。酒は最後の最後になるので、さらに売れ残る可能性もあります。私たちも覚悟を決めて、経済を止めることに反対はしません。何よりも、世界がこの新型コロナウイルスと戦っているので、それに日本だけゆるく戦うわけにはいきません。だからこそ、政治はリーダーシップを発揮して、企業の存続を優先できる政策を出してほしいです。
企業が潰れれば雇用が無くなり、失業率がとんでもなく高まります。ウイルスでも死にますが、経済でも人は死にます。出来ればどちらも救えるような日本になることを願っています。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人 / http://www.nanbubijin.co.jp
本文:南部美人 五代目蔵元 東京農業大学客員教授
久慈 浩介
岩手県の銘酒として知られる「南部美人」は、カナダ・トロントでも味わうことができる日本を代表する酒蔵で、2011年3月11日の東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。5代目である久慈さんは震災直後から日本酒を通じて地域復興の様々な取り組みを行ってきた。本連載では久慈さんが体験したことや復興の取り組みなどを寄稿してもらう。