金継ぎされた器の価値①|金継ぎ開拓民のお茶休憩
金継ぎをすると、壊れる前よりも器の価値が高まります」──このような言葉を目にすることがありますが、これは本当なのでしょうか。ここでいう「価値」とは金銭的な価値を指していることがほとんどですので、本稿ではまず金継ぎによる金銭的価値の変化についてお話しようと思います。
日本において、金継ぎは長らくパーソナルなものでした。思い入れのある器を捨てたくない、使い続けたい、あるいは次世代へ受け継ぎたいという気持ちからなされる修復であり、作品として発表したり、商売目的で売買されたりするものではなかったのです。
そのため、金継ぎの器がアンティーク市場に出されること自体が稀であり、出たとしても「漆や金で修理された器」として扱われ、完品(無傷の器)よりも低く評価されてきました。つまり、骨董業界では、金継ぎの器は完品に比べて価値が下がるのが現実でした。
一方で、近年では金継ぎがアート作品として販売される例も見かけるようになりました。個人販売のアートの価格は売り手が自由に付けられますので、買い手を納得させられれば「自分の金継ぎ作品」の価値を高めることができますし、その実績を積み重ねていけば、市場における「金継ぎ作品全体」の価値を押し上げることも可能です。
今年5月に、Waddington’sにてCSDA(The Canadian Society of Decorative Arts)のチャリティーオークションが開催され、私の作品『葉隠』が出品されました。これは割れた古伊万里の染付小皿を金継ぎし、欠けの部分に鍋島藩の家紋を蒔絵したものです。
Waddington’sにとって金継ぎ作品の取り扱いは初めてだったため、当初は慎重な姿勢でした。しかし、市場に新たな価値を作るには最初が肝心と考え、解説には金継ぎの技法や歴史、器が持つ背景や文化を丁寧に盛り込み、最低落札価格も無理を言って高めに設定していただきました。それは全出品の中で3番目に高かったようですが、入札なく終わるロットもある中、私の作品は無事に落札されました。
今後、アート市場において金継ぎの価値を高めてゆくために必要なことは、金継ぎの正しい知識を広めること、器に込められた物語を次の所有者の心へ真摯に届けること、そして金継ぎが持つメッセージ性を作品に的確に織り込むことだと考えています。
全漆芸への入り口として金継ぎに注目を集め、また、漆芸やその素材に携わる人々が正当な収入を得る選択肢の一つにできるよう、今後とも市場での価値創造に力を注いでいきたいと考えています。







