新作能「漆供養」と日比谷講演会|金継ぎ開拓民のお茶休憩

1月末より一ヶ月ほど、日本に一時帰国して参りました。彬子女王殿下、そして漆芸集団「彦十蒔絵」主宰の若宮隆志氏らを発起人とする新作能「漆供養」の初演にご招待いただき、また漆芸・伝統工芸関係者の皆様に向けて講演の機会をいただいたためです。
新作能「漆供養」は、漆掻き職人を主人公に、能登半島の風景や縄文以来の漆文化を物語に織り込み、漆の「記憶」と「技」を後世へ残すことを目的に企画された作品です。この企画自体は震災以前から進められていましたが、能登半島地震を受け、復興祈念能として1月25日に上演されました。本作は、彬子女王殿下による二首の御歌をもとに、林望先生が台本を書き下ろされています。
「漆てふ若木の涙固まりて神へと届く光とならむ」
「傷つきて涙こぼして倒されて命伝ふる漆うるはし」
掻き傷を付けられた漆の木より流れ落ちる漆を涙になぞらえ、一年限りで切り倒されてしまうその命が私たちの文化となって生活の中に、また世代の果てに連なり、繋がれてゆく幽玄の美が詠まれています。
能は、その成り立ちと物語に幾重もの歴史と文化を内包しています。また、公演前の鼎談では、能は一人のリーダーからのトップダウン形式で作られるのではなく、関わる方々の思いと意見を重ねながら形を整えてゆくものだと語られていました。全てを大切に拾い上げ、「余白」や「余韻」でその深層を感じさせる能という形式によって漆の文化を未来に繋げようという試みは、日本文化の持つ継承のあり方そのものを示しているように思います。この演目が今後も繰り返し上演され、時を経て古典として根付いていくことを願ってやみません。
2月11日には、国産漆の支援を行うNPO法人「壱木呂の会」の主催により、日比谷図書文化館にて講演会を行いました。タイトルは「漆と伝統工芸を200年先につなぐ ──海外での実践経験から見えた現実と戦略」です。
会場はほぼ満席となり、オンライン参加も35名を超えました。本講演では、海外で活動する立場から、伝統工芸を持続させるために必要となる視点や世界と日本の違いなどについてお話しさせて頂きました。終了後には多くのご質問やご意見を頂き、関心の高さを実感しました。
海外での活動を評価いただき、このように様々な機会を頂けたことをありがたく思っています。今後も実践を積み重ねながら、漆と伝統工芸の可能性を具体的な形で示していきたいと考えています。





