物産・踊り・日本酒・土佐御膳─五感で楽しむTaro’s Fishの高知フェア|トロントの魚屋さんTaro’s Fishで編集長のちょっと立ち話|#トロントグルメ部|食の編集部
オーナー・太郎さんが現地での出会いをきっかけに企画した本イベントでは、「桂月」の試飲会や物産販売、よさこいダンスの披露などが行われ、店内はまるで小さな高知に。柚子やカツオなど高知の鮮魚と食材をふんだんに使った「土佐御膳」も登場し、来場者の五感を通じて、高知の食と文化を堪能できる特別な時間が広がった。
高知フェアの原点は、
一杯の酒と一つの出会いから
「今回のフェアのきっかけは、日本酒インポーター『OZAWA CANADA』の小澤翔太郎さんとの出会いでした。彼に誘われて一緒に高知を訪ねたんですが、それがすべての始まりです。」
実は太郎さん自身も高知県出身。しかし「高知フェア」というテーマは、当初彼が考えていた年4回ほどのフェアイベントの中では想定外だったという。
「高知はもちろん故郷ではありますが、積極的にお店で食材を取り扱ってきたわけでもありません。でも、現地で出会った生産者の方々、そして土佐酒造『桂月』の松本社長ご夫妻との出会いによって自然に気持ちが動いていました。」
高知の空気、味、人。その場で交わした杯が心に火をつけ、人と人との縁がそのままフェアの骨組みとなって形になった——太郎さんはそう語ってくれた。
試飲会で広がった「桂月」の魅力
高知の自然と技が生んだ土佐酒造の逸品、日本酒初心者にも大好評
フェアのもう一つの目玉は、高知の銘酒「桂月」シリーズのテイスティング会。
会場には日本酒インポーター「OZAWA CANADA」代表・小澤翔太郎氏の協力のもと、土佐酒造の松本社長ご夫妻が来場。試飲ブースでは、来店者一人ひとりに酒の背景や味の違いを丁寧に説明する場面も見られた。
この日、とりわけ人気を博したのが、「桂月 CEL24® 純米大吟醸 50」。地元・嶺北地方産の酒米「吟の夢」を50%まで磨き、高知酵母CEL24で醸した一本で、トロピカルな甘い香りと滑らかな口当たり、すっきりとした余韻が特徴だ。国内外のコンペでも多数受賞し、「店頭限定銘柄」として並べられたこの一本は、開場早々に売り切れ寸前になるほどの人気ぶりだった。

さらに、自然な造りにこだわった「桂月 Sake Nature」や、柚子の果汁をたっぷりと使用した「桂月 YUZU SAKE」も提供され、日本酒初心者や若年層の来場者にも親しみやすく、高い関心を集めた。
今回の試飲会は、同時期に「KAMPAI TORONTO」もあり、日本酒文化を広げる貴重な機会となった。豊かな香り、透明感ある味わい、そして背景にある“物語”に触れた来場者は、それぞれに日本酒の新たな魅力を再発見するひとときとなった。
土佐御膳で味わう“高知らしさ”——
高知フェアの食体験を掘り下げる
高知の鮮魚と柑橘をふんだんに取り入れた特別メニュー「土佐御膳」がランチタイムに提供され、多くの来場者の注目を集めた。
御膳の中心は、高知名物のカツオのたたき。表面を香ばしく炙ったカツオに薬味を添えて、しっとりとした旨味と香りを楽しめる一品で、太平洋・黒潮で育まれた高知の魚文化を象徴する存在だ。
続いては、高知県産の鮮魚3種盛り(メジナ、カンパチ、ヤガラ)。刺身としての鮮度と歯ごたえの違いが際立ち、それぞれの魚の個性をじっくりと味わえる構成となっていた。
ユニークな一品はウツボの唐揚げとみょうがの天ぷら。高知では古くから食されてきたウツボは、丁寧に揚げられることで香ばしく、意外なほどクセのない美味しさ。季節の香味野菜・みょうがとの組み合わせが、夏らしい涼やかな印象を添えた。
さらに、柚子寿司は、土佐の名産・柚子の香りをまとわせた爽やかな一貫。甘みと酸味のバランスがよく、御膳の中で口をリセットする役割も果たしていた。
最後に添えられたのは、小夏。高知を代表する柑橘のひとつで、果肉のやわらかさとすっきりとした甘みが、食後に清涼感をもたらす。
よさこいアンバサダー登場!
踊りの力で会場が一体に
さらにフェアを彩ったのが、よさこいアンバサダー・田中さん率いるダンスチームのパフォーマンス。2曲のよさこい踊りが披露されると、店内には笑顔と手拍子が広がり、一気に祭りのような雰囲気に包まれた。
「カナダの地で、こうして高知の文化を目の前で感じてもらえるのは、本当にうれしいこと」と太郎さん。踊りのエネルギーが、高知の食と文化を繋ぐ架け橋となった。
五感で楽しむ「小さな高知旅」─
店内に広がるテイスティング&物産展示コーナー
フェア期間中のTaro’s Fish Woodbine店内には、通常とは異なる“にぎわい”があった。レジ横のスペースには、高知から届いた食品や菓子、ジュースなどがずらりと並び、まるで小さな物産展のような光景が広がっていた。
陳列棚には、「文旦ジュース」や「柚子果汁」「芋けんぴ」「天然だしパック」など、高知の山海の恵みがぎゅっと詰まった選りすぐりのプロダクトが所狭しと並ぶ。手に取れば、パッケージ越しにどこか懐かしくも洗練された“土佐の香り”が伝わってくる。
注目を集めていたのが、柚子寿司のテイスティングコーナー。透明感のある酢飯に、ほんのりと柚子の香りが乗り、さっぱりとした後味が印象的。「これ、食べやすくて本当に美味しい!」「家でも作ってみたい」と感想を漏らす来場者の姿も多く、テイスティング後に商品を手に取る人が目立った。
食べて、香って、選んで、知る——そんな「五感を使った高知の“旅”」を、ほんの数メートルの展示スペースが見事に体現していた。
「村おこし」のように—
これからも地域と人をつなぐ
太郎さんはイベントを振り返り、こう語ってくれた。
「自分も高知出身ですし、うちのスタッフにも高知から来た子たちが多い。だから、カナダでこうしてみんなと一緒にフェアをやれたことが本当に嬉しかったですね。
高知県人会の会長として、というよりも、“やりたかったからやった”というのが正直なところなんです」
その言葉どおり、今回の高知フェアは、ただの物産展では終わらない。人と人との出会い、生産地へのリスペクト、そして地域文化の魅力を伝える“温かな村おこし”のようなイベントだった。
Taro’s Fishらしい思いが詰まった、そんな一日になった。
季節の鮮魚や美味しいお刺身、お寿司、お惣菜が満載
Taro’s Fish
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